世界に200以上ある日本の大使館には、公邸料理人がいることをご存じでしょうか。外交の現場を裏で支えていることから、「食の外交官」とも呼ばれています。JNNはそんな公邸料理人に密着しました。

北京にある日本大使館。この日、開かれていたのは大使主催の昼食会です。

金杉憲治 駐中国大使
「きょうはネットワーキングランチです」

振舞われたのは、海老のお寿司や秋の季節感を意識した銀杏を使った日本料理。担当したのは、公邸料理人の堀郁雄さんです。

様々な国の外交官と信頼関係を作ることから始まる外交の現場。堀さんの料理を味わった各国の大使たちからは…

駐中国シンガポール大使
「(公邸料理人制度は)日本料理を世界に紹介できる優れた取り組みだと思います」

駐中国オーストラリア大使
「シェフは日本の秋の雰囲気を料理で表現しようとしていて、見事な仕事でした。日本の食文化は素晴らしく、日本外交の真の強みだと思います」

料理が日本外交の信頼関係に一役かったようです。

この、料理の持つ力について昼食会を主催した大使は…

金杉憲治 駐中国大使
「北京ではうちの公邸が一番美味しい日本料理を出してるよということを言うと、みんな来たいと言ってもらえる。人を結びつける力があるのが日本料理だなと思っています」

その料理。公邸料理人の堀さんは日本外交で必要な「会話」を促す役目があると考えています。

在中国日本大使館 堀郁雄 公邸料理人
「会食で一番大事なのは料理ではなくて、やはり会話なんですよね。会食での会話、それを引き立てるために料理があると思っています」

ところが今、大使館で外交を支える公邸料理人が直面している「課題」があります。

岩屋毅 外務大臣(当時)
「近年のインバウンドの増加、海外での日本食ブームなどによりまして、優秀な料理人の確保がますます困難になっていることも事実です」

人材確保のため、外務省は、▼在外公館との公的な契約に切り替え、任期は原則2年にするなど安定して働ける環境を整備。▼公邸での住み込みが条件だったものを住宅手当を支給し、外で暮らせるようにしました。

在中国日本大使館 堀郁雄 公邸料理人
「家族連れの場合ですとか子どもがいる場合は、公館によっては狭く感じるところもあると思います。(家族は)本当に助かると思います」

新制度は来年1月にスタートします。

在中国日本大使館 堀郁雄 公邸料理人
「(公邸料理人は)直接、国に貢献できますし料理で。非常にやりがいのある仕事だと思います」

日本の外交力強化のために新しい制度のもと、優秀な料理人を確保し続けることが求められています。