ドラマ制作の苦労は日韓共通
ドラマ制作上のエピソードやこぼれ話も、日韓問わず類似性があるものです。
若手プロデューサーの方は、講演前日、少々やっかいな俳優につかまってしまい?愚痴を何時間も聞かされていたという話を面白くしてくれました。「それこそがプロデューサーの仕事です!」と語る彼の話を聞く学生たちの顔は真剣そのものです。「プロデューサーはトラブルが生じた時にこそ存在価値が生まれる」とは、業界内で良く言われることですが、このあたりも両国の制作現場の空気感に大差はないようです。
いかにも温厚そうな年配のプロデューサーに「腹を立て怒鳴ってしまうことはありませんか?」と講演の後でお聞きしたところ、彼は「私にも、妻と子がいますので」と、笑顔で返してくれました。その言葉を聞き、私自身の未熟な作り手時代のことを思い出したりもしたのでした。演者・スタッフとしっかり向き合い、現場の空気をポジティブにする大切さを学生たちはしっかり理解したようでした。
後日、別のプロデューサーと食事を共にしながら、「韓国のエンタメ界で活躍する演者・作り手の皆さんは、世界を強く意識している点が素晴らしいですね」と申し上げたところ、「影山さん、私は逆に日本の皆さんが、自国のマーケットだけでビジネスが成立している点がうらやましいです。韓国の人口はおよそ日本の半分ということもあり、海外で勝負をせざるを得ないという一面があると思います。フルスピードで疾走しているイメージの強い韓国のエンターテインメントですが、そのスピード感を時に見直してみる必要もあるのでは?とあくまで個人的にですが考えることがあるのです。心のゆとりとでも言いましょうか。私が日本のエンターテインメントが好きなせいもあるのでしょうが」と、しみじみと答えてくれました。
彼はプロデュース業務をこなしながら韓国の大学院でメディアについて学んでいて、修士号を取得したところだと教えてくれました。今後日本の大学院へ進むことを目指しているそうです。もちろん日本も世界を意識しなくてはならないフェイズに完全に入ってはいますが、まだまだ日本のエンタメ界は、自国を主戦場として成立していると映るに違いありません。
近年、互いの国の俳優をキャスティングした「日韓共作ドラマ」や、韓国ドラマの日本版を制作するスタイルが見られます。いささか拙速というと関係者の皆さんにお叱りを受けそうですが、もう少し時間をかけ腰を据えて臨んでみてはどうかと思うところです。
まずはそれぞれが抱えている環境を深く理解し合い時に悩みを吐露することで、作品制作の魅力あるソースが醸造されるはずです。韓国の制作者たちが、日本を始め他国のエンタメ作品研究に極めて熱心なことに、研修に行くたびに感心させられます。
韓国の音楽番組はリハーサルも公開
学生たちが研修のなかで最も楽しみにしていたのが、韓国人気音楽番組のスタジオ観覧でした。ここで興味深いのは、韓国では番組収録の観覧のみならず、そのひとつ前のリハーサルの様子もファンたちに公開している点です。ライブで言えばさしずめ、「ゲネプロ」を一般の人々に見せるといったところでしょう。
彼女たちのテンションは当然マックス。中には「推し」のアーティストと対面でき、涙ぐんでいた教え子もいました。カメラワークは日本の音楽番組よりもアメリカのそれに近く、ダイナミックさをより演出している印象です。
そして収録が、いわゆる「順どり」ではなく、コーナーごとに翌週分、場合によってはそれ以降もまとめ撮りしておき、後に編集でつなぎ合わせて放送している合理的な様子も見て取れました。熱くなっている学生たちに、「そういうところもしっかり押さえといてね」と伝えたところです(笑)。














