ファンサービスが徹底している韓国のアーティスト

研修では、韓国の著名な芸能プロダクションを訪れ、そこに所属するアーティストたちのレッスンの模様を見学したり、直接教え子たちとコミュニケーションを取ってもらうというプログラムも組んでいるのですが、驚くべきは、彼らのファンサービスの徹底ぶりです。

これから世に大きく売り出していくアーティストだからということはもちろんありますが、学生たちの質問にひとつひとつ丁寧に答える真摯な態度は、正直申し上げて驚くほどでした。

一昨年訪れた事務所のアーティストたちから、ひとりひとりに一輪の薔薇をプレゼントされるというサプライズを受けた教え子たちは、頬を赤らめ「デビューが決まったら絶対応援します!」と言っていました。

「ペインターズ」と呼ばれるライブ公演も毎回鑑賞しています。舞台をアトリエに見立て、さまざまなアート作品をその場で完成させていくパフォーマンスは圧巻です。

海外からの観光客を取り込んだビジネススタイルが功を奏しているようですが、こちらも感心するのはファンサービスのきめ細やかさです。公演前にはステージ上のビジョンに「ようこそ!同志社女子大学の皆さま」と大きく映し出してくれ、川田先生の尽力で、公演後のパフォーマーたちと共に食事をする機会にも恵まれました。

その際私は、総合プロデューサーである社長と頼りない英語でお話することができたのですが、そのエネルギー、アクティブさに驚くばかりでした。端的に申し上げれば「世界」を完全に射程としているということでしょう。パフォーマーたちも、将来有名俳優やアーティスト、さらに世界的な舞台を目指す若手たちが中心です。

夢に向かって全力を尽くす姿はもちろん尊いですが、道半ばで方向転換する人も少ないとは言えません。もちろん日本も似た部分はありますが、そのシビアさは韓国の方が強いと感じます。私たちのことを「うらやましい」といったプロデューサーの言葉をふと思い出しました。

最後に韓国の学校との交流について少しだけ記します。

韓国の大学や高校における研修プログラムでは、東亜放送芸術大学(DIMA)、梨花女子大学、そしてハンリム芸能芸術高校を表敬訪問します。中でも東亜放送芸術大学では、年によって異なりますが、数日間をかけ韓国のエンターテインメントを学び、修了書が学生たちに授与されます。

東亜放送芸術大学は、放送・映像・音楽・演技・舞台・K-POPのジャンルで韓国エンターテインメントをけん引するアジア屈指のエンターテインメント専門大学として知られており、あの「イカゲーム」も大学内のスタジオで撮影されています。

「イカゲーム」が撮影されたスタジオ

研修でのご縁が深いことも奏功し、このたび同志社女子大学と学術連携協定を締結したところです。来年度以降は、更に充実したプログラムが実現するはずです。  

<執筆者略歴>
影山 貴彦(かげやま・たかひこ)
同志社女子大学メディア創造学科教授 コラムニスト。
毎日放送(MBS)プロデューサーを経て現職。
朝日放送ラジオ番組審議会委員長。
日本笑い学会理事、ギャラクシー賞テレビ部門委員。
著書に「テレビドラマでわかる平成社会風俗史」、「テレビのゆくえ」など。

【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。