事件発生から12年、ようやくはじまった「餃子の王将」運営会社社長殺害事件の裁判は、罪状認否が行われて、早々の一時休廷となりました。

 当時、王将フードサービスの社長だった大東隆行さん(当時72)を殺害した罪などに問われている、特定危険指定暴力団「工藤会」系幹部の田中幸雄被告(59)は、きょうの初公判にスーツの上下、白いワイシャツ姿で出廷。

 裁判長から起訴内容について問われると「私は決して犯人ではありません。決して、がつきます。事件は到底承服できない」とはっきりとした声で述べ、弁護側も「犯人ではありません、無罪です」と主張しました。

 ここで検察側の席から、衝立でその姿は見ることはできませんでしたが、遺族とみられる女性の「何ふざけてんねんや。何が無罪や。工藤会がなんやねん。お父さんを殺したんやろう」などと涙ながらの声が上がりました。

 裁判長が「静粛に」と注意するもとどまらず、傍聴席からも叫び声があがったため、田中被告は始まった早々いったん外にでて、裁判は約10分ほど休廷しました。

▼事件発生9年の新展開

 2013年12月、京都市山科区にある王将フードサービスの駐車場で当時・社長だった大東隆行さん(当時72)が、腹や胸に4発の銃弾を受け殺害されました。大東さんは毎朝6時に出社し、会社の前を掃除することが日課で、事件はその時間帯を狙ったとみられます。

 4代目社長だった大東さんは、客席から厨房が見えるオープンキッチンを導入するなど店舗改革を推し進め、経営危機に陥っていた「王将」を再建しました。

当時の苦労について大東さんは「ものすごいしんどい時期がありました。30店以上閉めて。それでも絶対に王将を立て直していきたい」と話していました。

 事件が急展開を迎えたのは、発生から、およそ9年後の2022年。警察は、現場近くに残されていたタバコの吸い殻から田中被告のDNA型が検出されたことや、大東さんの自宅周辺の防犯カメラに田中被告とみられる人物が映っていたことなどから逮捕に踏み切りました。しかし事件と田中被告を結びつける直接的な証拠や、背後関係は明らかになっていません。

 一方で、事件の後、王将が設置した第三者委員会は、特定の企業グループと不動産の売買など「不適切な取り引き」を繰り返し170億円の損失を出したと公表。大東さんがこうした状況を改善しようとしていたことがわかっています。

▼福岡県警OBの裁判見立て「被告は否認・黙秘を貫くと思う」

 長年、工藤会の捜査にあたってきた福岡県警のOBは、田中被告は裁判で「否認・黙秘を貫くと思う」と話します。

福岡県警OB・藪正孝さん「田中が自供とか、ましてや指示者を供述することはおそらくないんじゃないか。何のメリットもないから。無罪の判決もあり得るんじゃないかと思う」

 裁判を前に、大東さんの遺族はMBSの取材に「家族にとって分岐点。なぜ殺されないといけなかったのか、それがいちばん知りたい」とコメントしています。

 次回の裁判は2026年1月9日で、犯行現場に残された、たばこの吸い殻の状態などについて検察の証人尋問が行われる予定です。