“騒音”は友達 トゥレット症当事者のリアル

そんな怜音さんにも居心地の良い空間があると知ったのは、配達の様子を取材しているとき。注文を受けて店に料理を取りに行った際、目の前に工事現場が現れた。

ショベルカーの音がうるさかったため、インタビュー場所を変えようと、私がその場を離れようとした際に、怜音さんはぽつりと呟いた。

(怜音さん)「チックの症状を持つ人にとって、こういう場所はありがたいんですよね。特に大きな声が出てしまう僕にとって、声をかき消してくれる騒音は“友達”ですね。」

音楽が鳴り響くバーやボウリング場などザワザワした空間は居心地が良いという。

高齢男性に殴られて電車が“トラウマ”に

トゥレット症について取材を進めると、怜音さんのように“大きな声が出てしまう”だけではない症状があることを知った。

“公共の場で汚い言葉を発してしまう=汚言” 

“自分の体を無意識に殴ってしまう=自傷” など症状は様々。

神奈川県に住む菊地涼太さんは学生時代、電車の中で汚言が出てしまったことがきっかけで、高齢男性に殴られてしまったことがあるという。

この経験がトラウマとなり、電車に乗れない時期が3年ほど続いた。今では電車に乗る際、言葉が出ないように水を口に含むようにしていると話す。

(菊池さん)「公共の場で(言葉を)出しちゃいけないって思う。そうすると言葉が出てしまうんです」

​恥ずかしながら私はトゥレット症について知らなかった。取材を通して、当事者たちの生の声を聞くたびに「ヘンな人」などと感じてしまっていたことに申し訳なさがこみ上げてくる。


今年、CBCテレビの報道番組「チャント!」では9月と11月の2回にわたり、トゥレット症について特集した。怜音さんは最近、ある変化を感じているという。

(怜音さん)『配達先で「気にしないよ」とか「頑張ってね」と声をかけてもらう機会が増えました。メッセージを送り続けた効果もあり、少しずつですが病気のことを認知してもらえているような気がします』


怜音さんはこう続ける。

(怜音さん)「僕のように外に出ることができる当事者の方が少ないと思います。症状が人前で出てしまうのが怖くて、家に引きこもる人も多いです。トゥレット症をもっと社会が認知して、受け入れてくれて、余計なことを気にしなくても暮らせるようになるのが僕のゴールです」

無知だったあの時の自分に“反省”しながら私はこれからも取材を続けていきたい。