東京の八丈島で台風による土石流の被害が出てから、あさってで1か月。土石流に襲われた教員住宅が“土砂災害特別警戒区域”にあり、地元から東京都に対し要望があったにもかかわらず、改修工事などが行われていなかったことが分かりました。
先月、東京の八丈島を立て続けに襲った台風22号と23号。南東部の末吉地区には土石流が直撃し、町が設置した避難所に大量の泥や流木が流れ込みました。
土石流の被害は、隣接する建物にも…。
記者
「あちらから流れ込んできた土石流は、こちらの教員住宅を直撃しました」
東京都が管理する教職員住宅。私たちは、1階に住んでいた女性に出会いました。
土石流が起きた日の早朝、教員の夫と一緒に2歳の息子の面倒を見ていたといいます。その瞬間。
教職員住宅で被災した女性
「土が網戸や雨戸をぐっと押して、窓ガラスがバリバリバリと割れて、水がだーっと入ってきました。家中に広がっていって」
押し寄せる泥水。家族は外に逃げようとしますが…
教職員住宅で被災した女性
「夫が玄関のドアを開けに行ったら開かなくて、肩ぐらいの高さまで、外は水が流れている状態だった」
我が子を抱き上げ、部屋の奥に避難。室内の水位は上がらず、なんとか助かりましたが、今も恐怖がよみがえってくるといいます。
教職員住宅で被災した女性
「夜だとか本当に体が震えて、涙が止まらない時もあります。戻れるなら戻りたい。こんなふうになっても、私はこの場所に住んでいたいと思っていたんですけど」
これは八丈町のハザードマップ。住宅がある場所は、2019年、土砂災害特別警戒区域に指定されました。災害時に、住民の生命に著しい危害が生じるおそれがある「レッドゾーン」です。
ところが…。
教職員住宅で被災した女性
「(Q.『レッドゾーン』入居時に説明は?)なかったです。自分でハザードマップを調べて、レッドゾーンだなとは思ったんですけど、私たちは住宅を選べる立場じゃないので、入居させるんだから安全なんだろうと思って」
宅建業法には、不動産業者は危険性を説明する必要があると書かれていますが、なぜ都は説明しなかったのでしょうか。
東京都教育庁 福利厚生部 渋谷恵美 部長
「私どもは宅建業法の適用がある業者では違いますし、入居者様に十分に注意していただきながら、入居していただいている。(Q.都がここはレッドゾーンですよと説明したということ?)入居者さまが…確認していただいて、注意していただくということ」
東京都は、法律が適用される業者ではないため、危険性の説明は必要ないといいます。
さらに、八丈島にある都の出張所は、東京都の担当部署に、このままでは危険だとして、大規模な改修を2度にわたって要求しましたが、改修工事は行われませんでした。
これに対しては…
東京都教育庁 福利厚生部 渋谷恵美 部長
「新たな教職員住宅の建設を進めております。ただ、それがコロナの影響で実施・設計が中断してしまったりとか、入札不調になってしまいました、というところです」
「来年度の着工を目指している」としましたが、施工業者は決まっていません。
一連の対応について、小池知事は…
東京都 小池百合子 知事
「新規の住宅の建設も進めていたんですけれども、不調が続いているということで、遅れをとっているのは事実」
実は法律では、特別警戒区域に新たに建物を建てる場合は、土砂災害を防止・軽減するための基準を満たすよう求めていますが、元々建っていた建物の補強工事などは義務ではありません。
土砂災害に詳しい 横山芳春さん
「現在、土砂災害特別警戒区域は全国で60万か所程度あるといわれる。今回と同じような形の危険な状態の住宅は無数にある。本当に他人事ではない。場合によっては、どなたにも関係してくる可能性がある」
台風被害から、まもなく1か月。女性と家族は別の地区で新たな生活を始めましたが、都に誠実な対応を求めています。
教職員住宅で被災した女性
「ここで暮らして4年目になるんですけど、途中で子どもも生まれて、慣れない土地だったけど、とても幸せに暮らしていたはずなのに、こんなドロドロになって。これで本当にちょっと間違えば死んでいたと思うので、私たちが心が折れないうちに、早くきちんと対応してほしいです」
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