青森県内の優れたものや取り組みに迫るキラリ逸品。今回は八戸市の菓子店が作る「苔玉」そっくりのスイーツです。その見た目や味だけでなく店の雰囲気から商品のネーミングまで「和」をコンセプトにした非日常性が魅力です。

趣のある暖簾をくぐると苔に覆われた緑豊かな庭園が出迎えます。扉の向こうに広がる古き良き和の空間は、6月にオープンした菓子店・時空(じくう)です。八戸市の中心街で30年以上に渡って愛される割烹料理店に併設する店舗です。

※時空 對馬建爾(つしま・けんじ)シェフ
「もし400年前の日本に、いまの製菓の技術を持ったお店ができたらどのような店になったのかというのがコンセプトになっています」


店内は、きらびやかな文化が生まれた一方で、「静」の文化・茶道が完成したとされる安土桃山時代をイメージ。店舗名が物語るように「時空」は、時間と空間に思いを馳せた菓子店です。

とりわけ人気を集めているのがこちら、對馬建爾(つしま・けんじ)シェフが作るスイーツ「苔玉」です。

目を和ませる球体は、清らかな苔を思わせながら、洋菓子としての食感と歯切れを想像させます。この「苔玉」、並べた緑のボールに抹茶のパウダーをまぶし、土台のクッキー生地へ載せて、最後にてっぺんに葛切りを挿せば、雫が滴るリアルな苔玉の完成です。


※時空 對馬建爾(つしま・けんじ)シェフ
「味のバランス、食感やわらかさのバランス、それを取るのが非常に苦労しました。温度管理が特に大事ですね。暑い時期はすぐ溶けてしまうこともあるので一番気を遣いました」


ひとたび苔玉を割ると、抹茶ムースが包むほうじ茶の葛切りとあずきが姿を現し、バランスのいい甘さに仕上がっているのがわかります。この「苔玉スイーツ」、インスタグラムを中心に話題となっています。


ここ1か月だけ見ても、店のハッシュタグをつけた写真が30件以上アップされ、連日多くの人たちが訪れています。

※来店客は
「以前から気になっていまして来られてよかったです」
「食感が中と、下がクッキーでカリカリしていて違ってすごくおいしかったです」

茶室のような空間から覗く庭に季節を感じながら甘味を楽しむ店内。「時空」では約15種類の商品すべてに「和」の食材を使っているほか、商品名には「和名」を用いています。ショートケーキは…和三盆糖を使っているため、和三(わさん)。フランス語で「白い山」を意味するモンブランは、木々が生い茂った山をイメージした「青嶺(せいれい)」と名づけています。


※時空 對馬建爾シェフ
「今まで和の素材を扱ったことはほとんどなかったんですけども、料理に使う食材もケーキに用いておいしくなることがわかったので、特別な空間を特別なお菓子で味わってもらいたい」

四季折々の季節を楽しみ、自然との調和を大切にする精神性、そして文化を形容する言葉「和」。「時空」のスイーツには多くの人を魅了する時間と空間を超えた非日常が詰まっていました。


時空…八戸市柏崎1丁目 営業時間:午前10時半~午後4時半