櫻井選手が1年2か月ぶりに大会に出場する理由は、もう1つありました。

◆櫻井つぐみ選手
「(地元の後輩)中学生や小学生が出る大会で、(レスリング指導もしてきた)宿毛の子たちも出場し、一緒に出ることを決めました」

パリオリンピック直後からメディア出演・取材などで多忙だった櫻井選手ですが、その中でも地元高知や四国で行われるジュニアの大会やレスリング教室を訪れるなど、子どもたちと交流を重ねてきました。自身の経験をもとに指導していると新たな気づきがあるといいます。

◆櫻井つぐみ選手
「自分をきっかけにレスリングを始めたり、教えた技を覚たり、子供たちの成長がみられるとすごくうれしいです。今まで自分が出場してきた大会に行ったりお世話になった先生方に感謝を伝えたりしていますが、恩返しとして自分にできることは、子どもたちへの指導や自分の経験を伝えることだと思うので、これからも続けていきます。ただ指導はまだまだ難しいと思っています。競技者としてしか考えていなかった時の自分と比べると、勉強しなければならないことはたくさんあると思います」

櫻井選手を幼少期から指導してきた父・優史さん(高知レスリングクラブ)も、櫻井選手の金メダリストとしての「生きた経験値」が後輩たちに大きな影響を与えていると言います。

◆父・優史さん(高知レスリングクラブ)
「パリオリンピックの後は自分の練習よりも後輩に指導する時間が増えました。世界トップレベルの技を子どもたちに還元してくれます。技術だけではなく大会前の調整方法も教えてくれます。特に、モチベーションの上げ方を伝授してくれるのが子どもたちにとって大きいと思います。オリンピックという世界で一番の大舞台でベストパフォーマンスを見せました。その時のメンタルの作り方はとてもためになりますし、先日の国民スポーツ大会の前にも、出場する選手の前でつぐみに話してもらいました」

◆櫻井つぐみ選手
「誰もが経験できないことを経験してきたのは大きいので、それを高知県で伝えるのは自分の仕事だと思っています。オリンピックを目指してきたなかで、難しいことが多くありました。レスリングは突き詰めれば突き詰めるほど正解がないスポーツだと思います。私の経験を伝えることはレスリングをやっていない子にとっても活用できるものだと思うので、若い世代に、勝負の厳しさ・スポーツの楽しさ・目標を達成してきた喜びを伝えていきたいです」

インタビューの日、自分の練習をしつつ、妹・つきの選手を厳しく指導していた櫻井選手。技だけでなくレスリングに取り組む姿勢や、練習中の表情についてもアドバイスを送っていました。