兄は出征中 最後と思った帰省…

■弓取り式「かっこいい!」

長崎くんちへの出演の話は、髙橋修先生が、前回(2015年)のくんちで弓取り方を務めた縁で舞い込んだ。

初めて弓取り式を見たのは、髙橋先生が神社の宮相撲で弓取り式を奉納しているのを見に行った時。

「かっこいいと思った」

日本の伝統文化が好きなエゴールさん。長崎くんちで弓取り式ができることは嬉しいと語る。

春から髙橋先生と共に弓取り式の稽古をスタート。

学業に、相撲の稽古、さらに、くんちの稽古が佳境を迎える夏場は、相撲の大会による遠征も多く、多忙を極めたが、髙橋先生や、弓取り方の先輩のアドバイスを受け、精度を高めてきた。

■「自分が日本で頑張るのは当然」

8月上旬、エゴールさんはウクライナに帰省した。

エゴールさんにとって「特別な帰省」だった。

ロシアの侵攻後、ことし8月末まで、ウクライナの男性は、18歳になったら原則、出入国禁止となっていた。

10月18日で18歳になるエゴールさんにとって、最後の帰省になるかもしれなかった。

エゴールさんのふるさと・ウクライナ南部のミコライウ州には、たくさんのドローンが飛んで来ていた。

その風景は、ふるさとの日常となっていて、人々は普通に出歩いていたという。

家族は、父・母・兄とエゴールさんの4人だが、兄は戦地に行っている。

たまに兄と連絡が取れることもあるというが、心配は尽きない。

エゴールさんは、「自分が日本で頑張るのは当然」と語る。

日本でエゴールさんが活躍することは、家族にとって何よりの励みなのだ。

実家で約2週間、両親とゆっくり過ごし、「絶対、大相撲に入ってね」と励ましを受け、決意新たに長崎に戻って来た。

次いつ帰れるかわからないふるさと…いつ会えるかわからない家族…と思っていたが、直後、嬉しい出来事があった。

ウクライナが、18歳から22歳の男性についても出入国を認めると発表したのだ。

「次の帰省のタイミングは、先生が決めます」と嬉しそうに語ってくれた。

■長崎への感謝をこめて…

エゴールさんは卒業後、福岡県の九州情報大学で相撲を続けるため、長崎での生活はあと半年。

長崎くんちには、同じ相撲部3年の髙橋一旦さんと西山瑛太さんも太鼓持ちなどとして出演することになっていて、髙橋先生や仲間と臨む長崎生活最後のかけがえのない経験となる。

「先生に負けないようにかっこいい弓取りをして、長崎に感謝を伝えたい」

夢への道を支えてくれた長崎に、精一杯の思いを届ける。