9月下旬、静岡県掛川市内21あるすべての小学校で1年生から3年生までの通知表が2026年度から廃止されることが正式に決まりました。自治体単位では、静岡県内初めての取り組みとなる通知表の廃止、その背景には、教育現場を取り巻く大きな変化があります。
掛川城の近くにある市立第一小学校、3年生の授業です。児童が使っているのは、タブレット端末。アプリを使って割り算を学んでいます。入学して半年の1年生もアサガオの観察日記を作っていました。
掛川市内の小学校ではいま、タブレット端末を授業のさまざまな場面で活用しています。
<掛川市 佐藤嘉晃教育長>
「(通知表を廃止して)もっと子どもと、保護者と向き合う時間を確保して。私どもはDXを活用して、こどもたちの可能性をもっと伸ばす方向に切り替えたい」
今回、通知表廃止を決めた背景のひとつには、教育のDX化があります。市内すべての小学校で使っている学習支援アプリでは、ドリルやテストの問題を解いた結果をAIが分析し、児童は何が得意で、不得意かをデータやグラフで可視化することができます。
<佐藤教育長>
「(習熟度を)いつでも子どもたちも保護者も見られるようになっているので、わざわざ通知表を出す必要がなくなってくる」
通知表の代わりとなるのが教員と保護者、児童の三者面談です。学期ごとに各教科の習熟度や学校生活の様子などを直接伝えることにしています。
取材したこの日は、授業は午前中のみ。先生たちは午後から通知表作りに取り組みます。
<掛川市立第一小学校 平野理枝子教頭>
「同じ科目の中でも例えば算数が得意だなという子も、学習の内容によってはこの単元は得意だけどこっちはちょっと課題だなというところもある」
掛川市内の小学校では、各教科の成績を3段階で示します。しかし、先生たちには学習指導要領に沿った観点での評価や数行のコメントだけでは、子どもたちの努力や成長を十分に伝えきれないのでは、という悩みがあったといいます。
<掛川市立第一小学校 菅沼一浩校長>
「今までのように他と比べてできないとか、そういうことではなく、もうちょっとやるときっとこれも伸びるだろうからこれをやってみたらどうかというのを、子どもや保護者と共有しながら学校と家庭がシームレスになっていく形を目指すことが大事」
今回の通知表廃止について保護者に聞いてみると、三者面談に期待する意見が相次いだほか、子どもたちからは「先生の負担が減ればいい」といった声も聞かれました。
全国的にも珍しい掛川市の取り組み。数字だけでは表せない子どもたちの成長の跡をどう評価していくか、その効果が注目されます。