◇《アイヌ史研究者の著書を“つなぎ合わせて”異なる見解に…》

森田絹子キャスター)
 パネルの中には、ある研究について“正反対に引用している部分”もありました。例えば、アイヌ史や考古学を研究する瀬川拓郎教授の著書の文章をつなぎ合わせて、パネルのなかで、次のように“引用”しています。

▽【瀬川拓郎教授の著書から文章を“引用”して作成されたパネル】
・『日本列島の縄文人は、隅々まで同一の祭祀や呪術という精神文化を共有していました』(『アイヌと縄文』ちくま新書)

・『彼らの言語は「縄文語」という共通語である可能性があります」(『アイヌと縄文』ちくま新書)

・『日本人の祖先とも言えるでしょう』

森田絹子キャスター)
最後の文書(『日本人の祖先とも言えるでしょう』)は、主催者独自の解釈のものと思われます。

堀啓知キャスター) 
言葉をつなぎ合わせて、新しい文章にして、北海道と本州の一体性を印象付けることで“アイヌが先住民族であることを疑う根拠”にしているということでしょうか。

森田絹子キャスター)
HBCが瀬川教授にパネル展に引用されたことについて、取材をしたところ、次のような回答が来ました。

▼【札幌大学 瀬川拓郎教授】
「縄文時代以降、北海道の人びとは本土と異なる歴史を歩み、言語も含めて、本土とは異なる文化を形成してきた。そのような北海道の人びとが、近代には本土国家によって支配され文化的に同化されていったことから、国連などのいう“先住民族”と呼んで差し支えない」

「いずれにしてもアイヌが、縄文時代から北海道に暮らし続けてきた人びとである、という事実に注目する必要があります」

堀啓知キャスター)
瀬川教授は“アイヌを先住民族”としていますが、異なる主張に利用されてしまったということになりますね。

森田絹子キャスター)
『アイヌ施策推進法』でも先住民族と認めており、アイヌへの差別を禁止しています。今回のようにアイヌへの差別や誤解を招く恐れのある展示を公共的な空間ですることは、問題ないのでしょうか?