しっとりとした光沢のある帽子や、落ち着いた縞模様の名刺入れ。今回のしずおか産は、生地から作るのは日本ではここだけという「アバカ」を使った雑貨です。

静岡県袋井市にある「そま工房」は、約80年前に創業しました。ここで作られているのが、フィリピン原産の植物「アバカ」の布です。

<そま工房 乗松浩美専務>
「これがアバカの”木”です」

<社会部 大西晴季記者>
「ちょっと形がバナナみたいですね」

<乗松専務>
「バナナの仲間になるので」

高さはありますが草の仲間で、原産はフィリピンです。

<乗松専務>
「皮をはいでいくと、きれいな白い部分が出てくる、繊維を取り出して割いて、そのまま乾かして使っていく」

アバカは光沢があり、布に使う植物の中でも軽くて繊維が強いのが特徴です。

<大西記者>
「なかなか強く引っ張っても切れないですね。綿や他の植物の糸より強さは?」
<乗松専務>
「アバカは一番強いですね」

そま工房では、繊維がより長くとれるフィリピン産を使用。糸にしたアバカを昭和から使い続ける織機で布にしていきます。

<乗松専務>
「繊維をとったものをそのまま使っているので、糸の太さが全部バラバラ。細い繊維があったり、太い繊維があったり。それを織っていくと、自然と縞模様ができあがる」

織られた布は、襖の表の素材や高級ホテルの壁紙として使われてきました。

<そま工房伊藤恵三会長>
「繊維自体にだんだん縞がはっきり出てくる。50年でも、80年くらいのふすまを見たことあるけど、良いですよ」

アバカを使った産業はかつて、静岡県掛川市の横須賀地区を中心に県内でも盛んでしたが、手間がかかることや後継者不足により、現在では生地から作る工房は国内で「そま工房」だけになりました。

<乗松専務>
「いま日本で1軒になっている。この繊維業界もかなり衰退しているので盛り上げることができればと思ってやっている」

そこで6年前(2019年)、乗松さんが中心となり、新たな雑貨ブランド「Soma(ソマ)」を設立。現在10種類ほどの商品を販売しており、特に人気なのが「アバカ織とレザーのキャップ」(15,400円・税込)です。

<大西記者>
「軽いですね。通気性がすごく良さそう」

<乗松専務>
「この時期はすごく活躍します」

<大西記者>
「帽子に点々があるかなと思うのですが」

<乗松専務>
「これは繊維が縛ってある縛り目。(生地の色や繊維の太さも)全部違うので、同じ帽子は1つとしてない」

また、アバカ糸の光沢を生かしたイヤリングや名刺入れを製作。9月には新作のテトラバッグ(14,300円・税込)も発表。アバカの糸にラメ糸を織り込み、艶やかさを出しました。

乗松さんはブランドを通して、アバカの布の良さをさらに広めていきたいと話します。

<乗松専務>
「ファッションショーのアイテムとして使ってくれたらすごくうれしい。持ってて自慢したくなるような逸品を作りたい。『そうそう、これね』って語れるような逸品を作りたい」

取材で話を伺った乗松さんは地元での知名度がまだまだ低く感じていて、アバカを使ったクリスマスのレースやしめ縄をつくるワークショップを実施して、アピールを続けたいということです。

<店舗情報 そま工房
・場所:静岡県袋井市中新田343
・連絡先:0538-23-4771
・営業時間:9時~17時(定休日:土・日・祝日)
※オンラインで購入可