原発事故で帰還困難区域となった福島県浪江町津島地区の住民が国と東京電力を訴えている裁判で、19日、新たな争点について、専門家の証人尋問が行われました。専門家はアメリカから伝えられた対策をとっていれば、事故は防げた可能性があると主張しました。また、裁判は来年3月に、結審することとなりました。

この裁判は、浪江町津島地区の住民が国と東電に対し、ふるさとを除染し、原状回復をすることなどを求めているものです。

原告団・今野秀則団長「本日の裁判期日は、私たちのこの訴訟にとって、とても重要な裁判期日になります。みなさんの応援をいただきながらも、今後とも私たちは国・東電の責任を認め、そして、私たちが戦っているふるさとを返せというこの目的を、たとえ時間がかかろうとも実現するために、私たち原告団、団結して頑張ります」

今野秀則団長

原発事故をめぐる国の責任について原告側は、2006年と08年に、当時の原子力安全・保安院の幹部がアメリカに渡り、原発へのテロ対策について、説明を受けていたと指摘。一連の文書は「B.5.b(ビーファイブビー)」と呼ばれ、これに基づいた過酷事故対策をとっていれば、事故は回避できたと主張し、原発事故をめぐる新たな争点として、注目されています。

19日の裁判では、この「B.5.b」について分析をしてきた盛岡大学の長谷川公一学長が証人として出廷しました。原発事故の裁判で、この新たな争点に関する証人が採用されたのは、初めてのことです。

19日の法廷

長谷川氏は、「津波対策という第一の砦は破られたが、第二の砦である過酷事故対策がとられていれば、津島地区の暮らしは守られたのではないか」と訴えました。また、保安院が機密情報であることを理由に、情報を内部にとどめたことについては、「機密情報であることを隠れみのにした。極めて悪質だと思う」と厳しく批判しました。

一方、国側は反対尋問で、「B.5.b」がテロ対策であったことを指摘しましたが、長谷川氏は「「B.5.b」はどんな事故が起きても、とにかく原子炉を冷やし続けるという考え方で、原因ではなく、結果にフォーカスしている」と指摘しました。