「紛れもなく、当社の最高齢のOBですよ」
「正解でしたよ。あの当時は失敗だったが、何事にも恐れず立ち向かうファイティングスピリッツが育まれたのではないか。それが今の社風につながっていますよ」
それは、本人に対する気遣いというより、心からの御礼にも見えた。最後に現役社員と記念撮影に臨んだ春男さん、脳裏には80年近く前の自分の姿がよぎっていたのかもしれない。社長に「紛れもなく、当社の最高齢のOBですよ」と言われ、「今日は来て良かった、良かった」と何度も口にしていた。
持ち前のバイタリティーでシベリア抑留時代を生き抜き、帰国しても尚、人生を切り開いてきた春男さん。どんな困難が立ちはだかろうとも、それを乗り越える強さと生きるヒントが詰まっているような気がした。

〈これまでの記事〉
・100歳抑留者が初めて明かす 戦後80年の秘密①
・ロシア人女性との“禁断の恋” 命つないだロシア語への執念②
・強制労働先での出会い「瞳は丸く大きかった」③
・忘れられない ターニャの「ボルシチ」④
・「ハルオ、私と一緒になって」 知る由もない祖国の状況・未練⑤
・2人に訪れる転機 忘れられない彼女の表情⑥
・彼女からの最後のプレゼントは“香水”だった⑦
【CBCテレビ論説室長 大石邦彦】