新潟県上越市のバイオマスプラスチックの製造会社が『最高未来責任者』というポストに、ある人材を迎え入れました。
その人材は小学6年生。
任された仕事はプラスチックの未来を考えて会社に提言すること。
日々、プラスチックについて研究を重ねる小さな『最高未来責任者』を取材しました。

上越市に工場を構える『バイオポリ上越』。

上越市の指定ごみ袋をはじめとするプラスチック製品を製造しています。
このごみ袋の原料にはあるものが使われています。

【バイオポリ上越 武田豊樹社長】「コメ率20パーセントのゴミ袋になります」

バイオポリ上越がつくるのは食べられなくなったコメや廃棄される貝殻・木材などを使ったバイオマスプラスチックです。

ごみ袋のほか、箸やスプーン、くしなど、全国規模の店で使われている製品も数多く製造しています。そんな会社が今回、ある人材を募集しました。

【バイオポリ上越 武田豊樹 社長】
「18歳以下の人をチーフ・フューチャー・オフィサーに迎えたいと」

チーフ・フューチャー・オフィサー=『最高未来責任者』です。

【バイオポリ上越 武田豊樹社長】
「『こういうプラスチックを作るべきだ』と提案いただくのが一つ。もう一つは、子どもがこんなに関心を持っているという、世の中に対する注意喚起にもなる」

環境に配慮したプラスチックの未来を子どもの視点から一緒に考えてほしいと、今年6月に募集を開始。作文による選考で選ばれたのは武田社長も驚くほどの研究意欲の持ち主でした。

【バイオポリ上越 武田豊樹 社長】「お世辞じゃないんですけど、彼はすごいんですよ。普通の人は関心は持ってもあまり行動しない。彼は自分で実験をしたり調査したりしている」

いったいどんな人物なのか?


会いに行ってみました。

【佐藤悠雅さん(小6)】
「バイオポリ上越のCFOの佐藤悠雅です、よろしくお願いします」

差し出された名刺には「チーフ・フューチャー・オフィサー」の文字。

初代CFOに選ばれた小学6年生の佐藤悠雅さんが、待ち合わせの場所に選んだのは新潟市の海辺。

その理由は…

【佐藤悠雅さん】
「岩の上に大型のプラスチックがたくさんあったので、それがどんなものかなって調査したりとか、あと岩の隙間にいろいろあるんですよ」

悠雅さんは普段から海辺を歩き、どんなプラスチックごみが落ちているか、調査しているのです。

【佐藤悠雅さん】
「発泡スチロールがここにある。」

浜辺には発泡スチロールやペットボトルのほか、漁業用の浮きとみられる大きなごみもありました。さらに…

【佐藤悠雅さん】
「これとか…それとか…」

「よくわかるね」

【佐藤悠雅さん】
「海にあったものが紫外線とかでもろくなって割れて小さい直径5ミリ以下のマイクロプラスチックになってる。一つの所にずっとこうやってしゃがんで見てると大抵ありますね」


さらに悠雅さんの研究は、浜辺の調査に留まりません。

【佐藤悠雅さん】
「写真とかで、プラスチックを食べてしまった海鳥とかをよく見るんですけど、人間の身の回りにもプラスチックが影響があるんじゃないかと思って、実際に魚の解剖をしてみようと…」


“だし”を取るのに使われる「カタクチイワシ」を自分で解剖し、1匹1匹、体内にプラスチックがないか調べたのです。
その数なんと120匹!

1日かけて調べ上げた結果…


【佐藤悠雅さん】
「この2つ。赤いプラスチックと白っぽい感じのプラスチックです」

【佐藤悠雅さん】
「人間もこれが出てきたからには、プラスチックを食べているんじゃないかと、衝撃的でした」

他にも、微生物の力で二酸化炭素と水に分解される「生分解性プラスチック」を、牛乳とレモン汁で作った経験も。


さらに、新潟大学が実施する小中学生を対象としたジュニアドクター育成プログラムにも参加し、日々、その知識を深めています。

そんな研究への情熱が並大抵でない悠雅さん。
そもそも、プラスチックに興味を持ったきっかけは、2年前、海に落ちていたプラスチックで作品を作ったことでした。

【佐藤悠雅さん】
「プラスチックって安価だし丈夫だし、身の回りにありますけど、そんな人間を豊かにするものが海洋生物に被害を及ぼしていると知って『どうしてなんだろう』と疑問を感じて」


日頃から環境問題やプラスチックに関する記事をスクラップしていた悠雅さんは、新聞でバイオポリ上越のCFO募集を知り、すぐに応募しました。

「実際にCFOになってどう?」

【佐藤悠雅さん】
「うれしいですね。やりたいことがたくさんあるので」

先月に就任してさっそく、新しい素材を使ったバイオマスプラスチックを提案したといいます。

【佐藤悠雅さん】
「僕の友人で外来種のアメリカザリガニの研究をしている人がいるんですけど、外来種なので駆除されてしまうので、処分されるくらいなら、それをプラスチックにすれば再利用できるんじゃないかと思った」

行動力と熱意あふれる悠雅さん、将来の夢はやはり…

【佐藤悠雅さん】
「経験を生かして化学者になって、未知のものを研究したいなと思います」


CFOの任期は半年ですが、悠雅さんの研究がこれからプラスチックの未来を変えるかもしれません。