30代で失明「見えているうちに死ねたら」
そんな久保さんも、かつてはキルギスの視覚障害者と同じように引き籠っていた時期があったといいます。
(久保瞳さん)
「見えなくなって、30代で失明の宣告されたときは、『見えない世界で生きる』って考えられんですよね」
「『地底の中を、モグラのように這いずり回って生きていくのか』と考えたときに、『見えているうちに死ねたら、どんなに楽だろう』と思った30代でした」

もともと久保さんは、目が見えていました。学校を卒業後は、岡山市内の病院で、血液を検査する仕事をしていました。結婚をし、家庭を築き、子育てをし、順風満帆な人生を歩んでいました。

しかし、33歳の時に突然医師から「網膜色素変性症で、50歳までに失明する」と宣告されたのです。
失明し、見失った「生きる意味」
いま、子どもは独立し、夫には先立たれ、久保さんは、自宅での一人暮らしです【画像⑧】。料理は、見えていたころの手が、感覚で覚えています。ヘルパーを呼ぶ日もありますが、生活に困ることはありません。

ただ、見えなくなってからしばらくは、生きる意味を見失っていたと言います。
(久保瞳さん)
「普通に見えていたのが見えなくなるって、その中で生活するって、考えられないでしょう」
「手探りで全て生きていくと思ったら、そりゃ見えるに越したことはない。ものが一つ落ちても這いずり回って拾ってる自分の姿を思い出すだけで、情けなくなる」