気分が沈みがちな夏休み明けの9月1日、愛媛県久万高原町の小学校で、子どもたちを迎えたのは…黒板アート!

久万小学校の6年生の教室では、2頭のイルカが勢いよく飛び跳ねる絵が描かれていました。


このほかにも、海の生き物たちや浴衣姿で花火を楽しむ人たちなど、夏休み明けのちょっぴり沈んだ気持ちを吹き飛ばすような色鮮やかな世界が、一面に広がっていました。
“アートは贈り物”黒板アートの取り組みとは
この黒板アートは、久万小学校など町内3つの小中学校で行われ、美術を学ぶ学生や高校生、美術の元教員などあわせて23人が参加し、夏休み終盤の8月下旬から準備を進めてきました。
指導役を務めたのは久万高原町出身の日本画家・伊東正次(いとう まさつぐ)さん。
この取り組みは、芸術家を育てたい伊東さんの思いと地域を元気にしたいという住民の思いが重なり、6年前から始まりました。

▼日本画家・伊東 正次さん
「アートというのは最終的にはプレゼント。贈り物だと思っている。一番直接的な形が黒板アート。それがすごく良いなと思ったし、プレゼントする学生側にもそれを体験してほしいと思って」
今回、参加した学生のうち、6年生の黒板を担当した愛媛大学教育学部1年の宇治郷(うじごう)ももさんは、初めての挑戦でした。

▼愛媛大学1年・宇治郷 ももさん
「夕暮れの時間帯にイルカがジャンプしている。夏の終わりを感じられるかなと。切り替えも意識している。高校生の時から愛媛大学の学生がこの活動をしているのを知っていて、特技が絵を描くことなので、特技を生かして誰かを笑顔にすることができたらいいなと思って」
また、同級生の松本洋太朗(まつもと ようたろう)さんは、自身の経験が参加のきっかけでした。

▼愛媛大学1年・松本 洋太朗さん
「不登校の経験があるので、夏休み明け頑張ってきた小学生たちの顔をあげるきっかけになればいいなと思って参加した。生き生きとして臨場感のある作品に仕上げようと思っているので、二学期も元気に頑張るぞという気持ちになってもらえたらいいなと」
参加した学生たちは登校してきた子どもたちが元気になればと、数日がかりで、学校中の黒板を夢いっぱいのキャンバスに変えていきました。
思いは届いたようです。
▼児童
「上手に作れてる」
「消したくないくらい感動した」
しかし、授業の前には消さないといけません。
“消すまでが黒板アート”
▼日本画家・伊東 正次さん
「普段黒板で勉強しているところに絵があるというのが気持ちを楽しくしてもらう
それと同時に子どもたちに消してもらう。ただ描いて見て終わりではなくて自分たちで消しながら夏が終わったんだというハレからケ(非日常から日常)の気持ちの切り替えをそこで作ってもらう。」

元気をもらった後、子どもたちは仲間と一緒に黒板をきれいにしながら、気持ち新たに2学期をスタートさせました。