日本プロ野球が抱える構造的課題と未来
現在のNPB(日本野球機構)は構造的な問題を抱えています。NPBには国際的な交渉主体がなく、日本のプロ野球を実質的に動かしているのは読売新聞社であり、各テレビ局に権利を渡すような形で運営されています。このやり方では、世界のマーケットと争うことはできません。
方やJリーグは、マーケットを整備し、放映権をDAZNに一括販売することで、個別に放送局に売るのではなく、リーグ全体で権利を管理する形をとっています。NPBもJリーグのように、プロ野球全体でマーケットを管理する、そういう組織に変わらないと、これは世界から置いてけぼりになるでしょう。
すでに大谷翔平選手やダルビッシュ有投手、松井裕樹投手、鈴木誠也選手のような素晴らしい選手たちが大リーグに引っ張られていますが、今のままではこうした構造がずっと続くことになります。
先ほど登場した山本英一郎さんは、「日本は近い将来、日本と韓国と中国と台湾とオーストラリアと一緒にウエストパシフィックリーグを作って、アメリカのメジャーリーグと対抗するようなマーケットを作らないといけない」と提唱していました。こういう構想が今求められているのではないでしょうか。
しかし、日本の球団は独立性が高く、ビジネスを一つにまとめて行う体制になっていません。かつてメジャーリーグを取材した際、ドジャースの関係者が「我々MLBはWe(我々)という言葉を使うが、日本から来る人はI(私)で喋る」と話していたのを覚えています。全体としてまとまれない日本の現状を象徴しています。
ソフトバンクの孫正義社長がMLBと本物のワールドシリーズ開催を交渉しようとしても相手にされなかったのは、NPBが「リーグになっていないから」です。今回のWBC放送権の問題をきっかけに、日本のプロ野球が「反省と改革」に手をつけられるかどうかに期待しましょう。