スピード区間に自信を持つ木村と、全ての区間の準備をしている高島
19年以前の日本代表だったのが木村と高島の2人である。木村は19年世界陸上ドーハ5000mに出場。昨年マークした15分02秒48は日本歴代6位、ラストスパートは歴代日本選手のなかでも屈指のスピードだ。今季は本人も意外だったというが、1500mで4分09秒79(日本歴代6位)と自己記録を更新。10000mで31分51秒05と専門外の2種目で好タイムを出している。ただ、初10000mで31分台は評価できるが、「今後10000mを専門とするわけではありません」と明言した。「10000mは練習からリズムがわかりませんでした。それに対して1500mはスピードを出すと気持ち良い」。そのスピードを生かすとすれば、1区か2区だろうか。1区は昨年区間2位。区間賞の岡本春美(ヤマダホールディングス・24)と同タイムだったが、木村自身は「失敗してしまった」と反省する。
「プリンセス駅伝(1区区間賞)のように速いペースで押して行けたらよかったのですが、プレッシャーに負けて行ききれませんでした。後ろとの差を広げられませんでした」
優勝した積水化学に17秒しか差をつけられなかった。今年も1区なら「気持ちの部分で負けず、挑戦していきたい」という。田中希実(23・豊田自動織機、東京五輪1500m8位、世界陸上オレゴン5000m12位)が1区に来ても「田中さんを利用してライバルチームとの差を広げられれば」と走り方に迷いはない。2区では16年大会(当時ユニバーサルエンターテインメント所属)で区間賞を取ったことがある。「突っ込む走りをするだけです。それがチームにプラスになる」と、この区間にも自信を持つ。
高島は10000mで15年世界陸上と16年リオ五輪に出場。リオ五輪では31分36秒44と当時の自己記録に肉薄した。駅伝では13~15年のデンソーの3連勝にエースとして貢献し、資生堂に移籍した16年には3区で3年連続区間賞と、クイーンズ駅伝で快走を続けた。17~19年も3区で区間1桁順位を続けたが、20年大会は故障の影響で直前に欠場。資生堂は出場区間の大幅変更を強いられ、12位でシード落ちした。しかし昨年の高島はプリンセス駅伝5区区間新、クイーンズ駅伝6区区間4位と、再浮上の兆しを見せた。
そして今季は「脚の故障」で夏まではレースに出られなかったが、10月の10000m記録会で32分23秒39の4位。「夏からしっかり練習ができています。ここ数年では一番良い」という状態でクイーンズ駅伝に臨む。
3区の経験が多いが、デンソー初優勝時は5区で区間2位の走りも見せている。「区間はまだわかりませんが、何年も走れていないのでリベンジの思いもありますし、区間賞争いも久しぶりにしてみたい」と、好調ぶりが言葉の端々に出る。
だが、次の言葉が意外だった。
「優勝するためにはどの区間も大事です。3区と5区がメインではなく、全部が主要区間です。どの区間にも対応できるように準備をしています」
インターナショナル区間の4区を除き、全ての区間の準備をする。デンソー時代も、資生堂移籍後も、高島がそうした準備をしたことはなかった。そこに今季の資生堂の特徴と、優勝への強い意思が現れている。
岩水監督「誰も予測できない区間エントリーに」
今年の資生堂は選手層の厚さを生かし、どんな区間配置でも戦えるメンバーで臨む。そこが最大の特徴と言っていい。木村が10月に10000mを走ったのは、前述のように距離を伸ばして代表を目指すためではない。「駅伝は10km以上の区間が2つあります。どの区間でも走れるように、スタミナの部分のトレーニングをしてきました。その確認のためです」10月の10000m記録会は以下の結果だった。
1)31分44秒52 五島莉乃
2)31分51秒05 木村友香
3)32分23秒14 一山麻緒
4)32分23秒39 高島由香
5)32分32秒39 佐藤成葉
6)32分58秒17 樺沢和佳奈
佐藤成葉(25)は前回の3区区間6位選手だが、今季前半は貧血で記録が低迷した。9~10月に5000mと10000mでシーズンベストを出したが、自己記録には両種目とも40秒前後の差があった。「落ち込んでいる時期が何度もありましたが、高島さんに気づいていただき、優しい言葉も厳しい言葉もたくさんかけていただきました」。同期入社の五島とも「お互いのことを励まし合っている」という。
10000m記録会には1500mが専門で前回2区区間6位の樺沢和佳奈(23)まで出場している。「駅伝は10km以上の区間が2つあります。去年はその区間のことなど考えず、人任せにしていました。スタミナ強化の一環で(10000mを)経験してみたかったんです」
樺沢は今季5000mの自己記録を15分40秒19まで伸ばした。それも、全日本実業団陸上という全国大会で独走で出した記録だ。10km以上の3区と5区は無理でも、1区と6区には十分対応できる。10000mを走ったのは、10km区間を人任せにしない「チームワーク」の意味もあるという。
2年前に12位とシード権を失ったときは、高島の欠場でほとんどの区間を直前に入れ替えての起用になった。その反省から、優勝を狙う今年は、誰が、どの区間を走ってもいいように、全区間に対応できる練習を行い、試走も全員が「全区間を試走した(高島)」という。「(代表など)実績に関係なく、今の状態で区間を決めます」と岩水監督。そして「誰も予測できない区間エントリーになるかもしれない」と付け加えた。
どんな区間配置になろうとも、150周年の資生堂は優勝候補筆頭だ。














