
公演本番の前日、会場では朗読劇に向けた準備が進められていました。
地域の自治組織を束ねる和賀地区自治協議会が主催する公演の準備と並行して行われていたのが、高橋セキさんら朗読劇に登場する当事者やその関係者を探す取り組みです。

(ハナミさん聞き取り)
「セキさんは私の隣だから(隣…高橋家の?)すぐ西隣(同じ親戚筋?)うん。親戚です」
北上市和賀町長沼の高橋ハナミさんは1932年・昭和7年生まれの93歳。
終戦後、嫁ぎ先の隣家の庭先で一人息子を戦地で亡くした高橋セキさんが、小さな小屋を建てて寂しく暮らしていたのを覚えていました。

(ハナミさん聞き取り)
「(千三さんの話なんかもしてましたか?)全然そういう話はホレ。(千三さんが)戦死してから(嫁に)行ったのだから。ただ悔し、悔しかったということだけ。それだけ。何、何て言ったらいいんだかな…寂しい人だなということはわかってきたからね」

北上市内には、高橋セキさんが千三さんのために道端に建てた墓があります。

一人息子を戦争で失った母の深い悲しみとそのことを忘れないでほしいという切なる願いは、墓石に刻まれ決して消えることはありません。

(髙橋ハナミさん)
「こうして皆なに来てもらってだべ。拝んでもらって道路を歩く人に手を合わせてもらって、幸せだと思う」