テレビ局のジャーナリストから、四国最西端の観光リーダーへ。異色の経歴を持つ男が、故郷・愛媛で新たな挑戦を始めた。

2025年4月、佐田岬観光公社の事務局長に就任した河本充夫氏(59)。

彼が就任後すぐに取り組んだのが、佐田岬のシンボル・佐田岬灯台の活用だ。これまで見上げることしかできなかった灯台の内部が、この夏、8月2日から9月末までの毎週土曜日、限定で公開されることになった。

報道の最前線から観光の舞台へ

河本氏は長年、テレビ東京の報道局に籍を置き、ワシントン支局長も務めたベテランジャーナリストだ。30年以上、報道の現場を走り続けてきたが、57歳で役職定年を迎えたことを機に、自身のキャリアを見つめ直した。

「自分の経験を直接、社会に役立てる仕事がしたい」そんな思いから早期退職を決意し、新たな道を模索し始めた。

元々、海外経験からインバウンド観光に興味を持ち、国家資格である「全国通訳案内士」の試験勉強にも取り組んでいた。

故郷・愛媛への貢献も視野に入れつつ、国内外問わず活躍の場を探していたところ、佐田岬観光公社の事務局長候補の公募を見つけたのが転身のきっかけとなった。

知恵と汗で乗り越える「ないもの尽くし」

しかし、就任して目の当たりにしたのは、潤沢な予算や人員を誇る大企業とは全く異なる「ないもの尽くし」の現実だった。

観光公社の常勤職員はわずか2名で、町からの派遣やアルバイトを含めても6名しかいない。予算規模は小さく、事業の柔軟性は低い。会員への連絡はいまだに郵送が中心で、過去の資料は紙のファイルで保管されているなど、DX化も進んでいない。

「規模が小さくて予算がないから、より手間と暇がかかる方法しか選択肢が取れない」河本氏は小規模団体が抱える困難さをそう語る。

だが、そこで嘆く河本氏ではない。

「予算がないならないなりの工夫が必要。知恵を絞って汗をかく」その言葉を体現したのが、今回の灯台一般公開だった。