最前線で活動する「選抜メンバー」になるまでに12年近くを要した”遅咲きの”アイドルがいる。

HKT48の山内祐奈(26)。
加入時14歳の中学生だった少女は、この夏、加入から4281日を経て「シングル選抜」(シングル表題曲の歌唱メンバー)という夢を叶えた。

48グループのメンバーで最長となったその道程は、悔し涙の連続だった。
それでも逃げずに続けたのはなぜか。
あきらめなかったその原動力は、何だったのだろう。

オーディションに合格して”選ばれる”まで、そして”これから”を聞いた。

選ばれる、選ばれない に振り分けられる世界

山内がHKT48に加入した2013年の世相は、アベノミクスで異次元の金融緩和が始まり、福島第一原発の汚染水問題が深刻化する中、東京五輪の開催が決定。
誰もが「今でしょ」「倍返しだ!」「じぇじぇじぇ」と口にし、消費税はまだ5%の頃である。
その年の夏、14歳でオーディションに合格しHKT48に加入した山内は、当時から夢を抱いていた。

HKT48 山内祐奈(26)
「HKT48に加入したからにはCDジャケット写真にも載りたいし、選抜メンバーになりたいという思いは加入当初から強かったです。ほかのメンバーも皆同じ思いを抱いていると思います。私からHKTのメンバーを見ると、一人一人に魅力があり輝いています。ですが、その中から選ばれるメンバー、選ばれないメンバーに振り分けられる世界なんですね。選ばれると(プロモーションやTV、雑誌等のメディア露出など)活動の範囲も広がるし、場数を踏むとスキルアップもできます。そして何よりファンも喜んでくれる。それは一番の目標であり夢なんです。」

選抜メンバーの発表は、コンサートや、インターネット生配信、SNS配信など様々な場で行われてきた。

HKT48 山内祐奈(26)
「選抜されていないメンバーは情報を事前に知らされないことが多いんです。発表の際自信があるわけじゃなくてもやっぱり期待している自分もいるんですね。『来い、私の名前来い!』と。ですが選ばれないことが重なって『ああ、そうなのか・・・』と。それは辛い。悔し涙を何度もたくさん流してきました。それがいつからか悔し涙を我慢できるようになっている自分がいました。我慢して流さなかった涙の量も多かったと思います。10代の後半には、劇場公演で笑えなくなっていた時期がありました。笑えるけれどどこか顔が引きつっている。お仕事だからやらなきゃいけないけど、もう精神的に追いつかなくなっていたんです。将来を見据えてこれからどうしようと人生の悩む時期に、これだけ報われないことが連続すると「もう無理なのかな」と壁にぶつかってしまいました。それは長かったです。」