岩手県遠野市出身の人類学者、伊能嘉矩のライフワークである台湾研究や、遠野についての研究の史料を集めた特別展が遠野市で行われています。

「伊能嘉矩~台湾研究と郷土研究の生涯~」と題して行われているこの特別展は、2025年が伊能嘉矩の没後100年であることを記念して、遠野市立博物館が企画したものです。

遠野市東舘町で生まれた伊能は、東京人類学会で「日本の人類学の草分け」と言われる坪井正五郎のもとで学び、「奥州地方に於いて尊信せらるるオシラ神に就きて」という論文を発表、日本で初めてオシラサマを学会に紹介しました。

1895年に台湾に渡った伊能は、10年間にわたり台湾原住民の調査・研究を行いました。会場には台湾研究の際に使用した資料や、調査時のメモ、研究結果をまとめた図などが並んでいます。

帰国後は郷里である遠野について、人類学的な視点からの研究をすすめた伊能。
遠野研究をまとめたコーナーではオシラサマ研究だけでなく、アイヌ語地名についての研究や、遠野市内にある「不地震地」という地震の際に揺れない土地についての研究の史料が並びます。

また伊能は民俗学者の柳田國男が「遠野物語」の本を出版する前に、様々なアドバイスを送っており、その際にやり取りした手紙なども公開されています。

遠野市立博物館の資料取扱事務員の佐藤夏穂さんは「伊能の研究成果は、現在も多くの人類学を学ぶ学者や学生の礎となっています。台湾や遠野で調査研究を続け、その成果を多くの人に広めた伊能の足跡をたどってみていただきたいです」と話していました。

この特別展は8月31日(日)まで行われています。