安倍元首相が演説中、北海道警がヤジを排除した問題は、裁判で違法とされた。その後の銃撃事件の際は「選挙妨害のヤジを表現の自由として許した先に散弾銃があるんやで」と批判する人も相次いだ。だが、北海道放送報道部が出版した書籍「ヤジと民主主義」を読むと、そうした批判が浅薄であることがよく分かる。RKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』で、神戸金史解説委員が解説した。

◆ドキュメンタリー『ヤジと民主主義』はYouTubeで公開中

11月12日の朝日新聞デジタルに載っていたんですが、先週「ヤジと民主主義」という本が出ました。北海道放送の報道部「道警ヤジ排除問題取材班」著、出版社名は「ころから」で、税別1800円。北海道放送制作のドキュメンタリーを書籍化したものです。2019年7月に札幌で街頭演説する安倍晋三元首相に向けて複数の聴衆が異議申し立てをした時に、警備していた北海道警が、声をあげた聴衆のうち、少なくとも9人を強制的に排除したのがニュースになりました。その後の訴訟も注目されました。

その経緯を、私たちのニュースネットワークの仲間である北海道放送(HBC)が2020年に放送した『ヤジと民主主義?小さな自由が排除された先に~』は、ギャラクシー賞などの大きな全国コンテストで次々に表彰されました。このテレビドキュメンタリーは今もYouTubeで無料公開されています。けさ(15日)見たら37万2600回あまりの再生回数でした。
https://www.youtube.com/watch?v=X42DstsPmsc

◆現場での音声を聴く

ラジオドキュメンタリーにもなっているので、一部をお聴きください。

安倍晋三元首相:札幌の皆様、そして北海道の皆様、こんにちは! 自由民主党総裁の安倍晋三でございます。

ナレーション:集まっていたのは、約1200人の聴衆。演説開始からわずか1分後。安倍総理と道路を挟んで約20メートル離れたところで演説を聞いていた、1人の男性が声を上げました。

男性:安倍辞めろ、帰れー!


ナレーション:しかし男性は声を上げた直後、周りにいた10数人の警察官に取り囲まれました。男性は両脇を抱えられながら、安倍総理から遠ざけられるように30メートルほど強制的に連れ去られました。安倍総理が演説に来たこの日、札幌で警察に排除された人は少なくとも9人いることがHBCの取材でわかりました。

女性:そういう命令が出てるんですか?
警官:命令とかじゃない。もうちょっと離れて。
女性:何の権限があって、「もっと離れて」とか言うんですか?
男性:あなたは警察ですか、ちなみに?
警官:警察です。

プラカードを上げただけで声を出してない人も、排除されています。そのうちの2人が北海道を訴えて、2022年3月に札幌地裁は道に88万円を賠償するようにという判決を出しました。この経緯を追加取材して刊行されたのが今回の本なんです。