50キロの旅路 集落をリレーでつなぐ

再びわら人形を担ぎ、地区の境界まで運びます。地区から地区へと、住民がリレー形式でつないでいきます。数週間をかけて50か所以上をリレーし、下関市豊北町あたりまでおよそ50キロを運んで海に流します。

高齢化が進むなどしていることから、国はおととし、サバー送りを「記録が必要な無形民俗文化財」に選択しました。

わら人形は、隣の日置地区に入ってすぐのトンネルの中に置かれました。一行は後を振り返らずにすぐに神社へと戻り、わら人形は次の集落の人に任せます。

言い伝えに込められた切実な思い

置かれた集落では「早く次に送らないと害虫が周囲に散ってしまう」などさまざまな言い伝えがあります。

日置地区の住民
「恐ろしいからかけって通(走って)り過ぎよったんよ、こまい(小さい)ときは。不吉なと思って。大きくなったら、これこれという」

日置地区の住民が、わら人形が置かれたことを知ると、軽トラックに乗せていました。集落の周りでは過疎高齢化が進み、送り継ぐ人がいなくなるのではという心配もあります。

日置地区の住民
「ずっと昔からあるもんじゃからね、無くすということはうれしくないね」

それでも伝統は守りたいと、次の目的地までわら人形を運んでいました。

300年を超えて思いを受け継ぐ

上田宮司
「生活の根幹だろうと思うので、なかなか無くなっていくのはさみしいですし、できる限り続けていければと思ってます」

北浦でひっそりと続く「サバー送り」。300年を超えて、豊作を願う農民の思いを継いでいきます。