稲作を脅かす害虫への恐れと、豊作への切実な願い。江戸時代から300年以上続く山口県長門市の伝統行事「サバー送り」は、農民たちの祈りを込めた神事として、今もひっそりと受け継がれています。

害虫を追い払い豊作を願う

山口県長門市の飯山八幡宮で行われる「サバー送り」は、稲につく害虫を追い払い、豊作を願う虫よけの神事です。毎年、田植えの終わったこの時期に「サバー様」と「サネモリ様」と呼ばれる馬に乗った人形2体が作られます。

飯山八幡宮・上田久允宮司
「かつては、江戸時代なんか5年に1回飢饉だったということを聞いたこともありますし、それこそ神頼みじゃないですけど、神様にお願いして虫がつかないように豊作を祈るというのが根本だろうと思います」

2体のわら人形「サバー様」と「サネモリ様」

「サバー様」は稲の害虫・ウンカの化身で、「サネモリ様」は馬が稲の株に足をとられて無念の死をとげた平安時代の武将・斉藤実盛を表しています。

稲の株を恨み、害虫となった実盛の怨念を慰霊して、害虫を連れ去るよう祈る行事と言われています。

神事のあと、2体のわら人形の出発です。神社周辺の4つの集落が毎年、交代で送り出します。

今では軽トラックに積んで運んでいます。途中で神社の総代の家に立ち寄ります。わら人形の腰につけた「オゴク」と呼ばれる白ごはんが渡されます。長い旅の中での弁当のおすそ分けといったところでしょうか。

神社の総代
「ありがとうございます。お疲れさまです」