熊本市中心部のアーケード街は「モノからコトへ」街なかが変化しています。

多くの人が行き交う新市街に店を構える「シューズつちや」1950年の創業以来、ここで営業を続けてきましたが、店内にはこんな張り紙が・・・

シューズつちや4代目社長 松浦晴美さん「一番の原因は建物の老朽化。だんだん売り上げが低迷していった。そろそろ潮時かなと」

あす7月10日で75年の歴史に幕を下ろします。かつて1日に200人ほどが来店していましたが、郊外に大型ショッピングセンターができたことで、売り上げが減り、さらには・・・
シューズつちや4代目社長 松浦晴美さん「若い人はネットで買うので。うちで試し履きしてサイズが合えばネットで注文する。だから売り上げにはつながらない」
老舗が姿を消すことに買い物客からは・・・
買い物客(60)「良い店だったのに閉店になるのは寂しいな」

新市街にアーケードが完成して、2025年で50年。松浦さんは、変わりゆく街を長年見つめてきました。

シューズつちや4代目社長 松浦晴美さん「百貨店の銀丁があって、映画館があって、道があって車が通ってて・・・。本当はファッション関係のお店が欲しいけど、なかなかですね・・」
最終日の明日10日は午後6時まで営業し、建物や跡地の今後は決まっていないということです。
熊本市中心部のアーケード街には、かつて多くの老舗がありましたが・・・

記者「閉店するシューズつちやの隣はコンビニ、その隣はドラッグストアになっています」


姿を消していく老舗の代わりに増えているのが全国チェーンの店です。下通と銀座通が交差する場所に2024年に完成したガラス張りのビル。かつて、ここにあったのは・・・文化堂レコード店です。
新しいビルのテナントを見ると・・・1階がコンビニ、2階が喫茶店、3階が居酒屋、4階、5階はカラオケ店。全てのフロアが全国チェーンの店になっています。
オーナーに狙いを聞いてみると・・・
熊本不動産取引 小森健一郎社長「2階のコメダは街なか初、3階は鳥貴族で熊本初。一番の中心地なので、にぎわうことが大事。街にふさわしい店ができたと思う」
100件近くのオファーの中から話題性や街なかの活性化をテーマに店を絞り込んだと言います。
熊本不動産取引 小森健一郎社長「何万人という人が通りを利用している訳なので、その方にプラスになるような構成にした」
なぜ街なかで全国チェーンの店が増えているのでしょうか。不動産関係者は・・・
美創テナント不動産事業部 髙下祐一課長「新築ビルに関しては、建築コストが非常に高くなっているので、それを回収するために家賃設定はどうしても上がっていく」

老朽化したビルの建て替えが進み平均賃料が上昇することで、資金力がある全国チェーンの進出に拍車をかけていると分析します。

▼熊本市中心市街地の平均賃料は10年で1.3倍に
2014年:3044円/㎡ → 2024年:3875円/㎡
地方経済総合研究所の調査によると、上通、並木坂、下通にある全国チェーンの店はこの10年で1.7倍に増加しました。

▼下通など中心商店街の全国チェーン店
2012年:79店 → 2022年136店(₊57)
特に、サービス業や飲食店の伸びが顕著で、モノからコトへと、街なかの産業構造が変化していると言います。
▼下通の全国チェーン店の業種別順位(2022年)
※カッコ内は10年前からの増減
1位 飲食業30店(₊12)
2位 サービス業29店(₊22店)
3位 小売業22店(₊5店)

実際に街なかで100人に「何をしに街なかへ来たか?」と聞いてみると・・・
飲食 19歳・大学生「買い物はしに来ない。遊びに来るか、ご飯食べにくるか」
娯楽 17歳・高校生「友達とカラオケしに来た」
買い物 70代・主婦「昔はしょっちゅう来ていたけど、今はあまり来ない」
外国人観光客も・・・
飲食 台湾から「焼肉とか、ラーメン、寿司」
飲食 台湾から「ココイチのカレー。これからセブンイレブンで飲み物を買おうと思って」

目当ては「飲食」や「娯楽」が多く、「買い物」と答えたのは100人中24人にとどまりました。
▼何をしに街なかへ来ましたか? 100人調査
「買い物」24人「飲食」28人「娯楽」27人「その他」21人
商店街関係者は現状をどう捉えているのでしょうか。
上通商栄会 田原誠也会長「空き店舗が増えるよりかは何らかの店が入った方が街としては良い」
老舗が消えることに寂しさを感じながらも前を見据えます。
上通商栄会 田原誠也会長「体験型のイベントを少しずつ増やして、インバウンドの方も国内の方も楽しめるような、街に出てこないと体験できないことを増やしたいと思う」
あす10日で閉店を迎える「シューズつちや」の松浦さんもこう願います。
シューズつちや 松浦晴美さん「新市街は『新しい街』と書く。色んな新しいお店をどんどん増やしてもらい、もう少し活性化してほしい」
時代とともに変わり続ける「街なか」は、これからはどんな変化を見せるのでしょうか。