7月20日は 参院選の投開票日ですが、愛知県豊橋市ではもう一つの投票日でもあります。「新アリーナ事業」をめぐる住民投票、市民の選択は!?

住民投票で問われているのは、「新アリーナ事業」。 豊橋公園の野球場を取り壊し、公園の東側エリアを整備する計画で、スポーツイベントやコンサートに使う5000人収容のアリーナを建設します。

総事業費はおよそ230億円。プロバスケットボールチーム、「三遠ネオフェニックス」の新たな本拠地になる構想です。

去年9月に正式契約を結び、2027年の開業を目指していましたが… 契約解除を掲げる長坂尚登市長が当選したため、去年11月以降、事業はストップしています。

投票できるのは、18歳以上の市民およそ29万人。事業の継続に賛成か反対か、どちらかに丸を書く形式で行われます。

ことし5月に住民投票の実施が決まってから、熱を帯びる賛成派と反対派。 7月2日には、同じ場所で双方が順番に説明会を実施しました。

賛成派は今後30年間で1100億円の経済波及効果があるほか、災害時の拠点としても活用できることなどを訴えます。

一方、反対派は、高額な税金投入の問題やアリーナができると周辺の道路が渋滞することなどを理由に挙げます。

問題となっているのは、230億円という税金。私たちは市と契約を結んだ事業責任者を取材しました。

(豊橋ネクストパーク 平出和也社長)
「税金の使い道としてどうかという議論があるのは承知しているが、新しい公園やアリーナができるというのはある意味、未来への投資。にぎわいができることで、色々な事業者にとって売り上げが増えたり活性化する。そうなれば結果的に市へ税金として戻ってくる」

事業者は230億円を全額、新アリーナなどの設計と建設費に充てると提案。「稼げるアリーナ」を作ることで、30年間の運営費は市の負担がなくても 採算がとれるといいます。一方で、工事は 現在、半年以上中断。

(豊橋ネクストパーク 平出和也社長)
「市長選の結果、反対を標榜した市長が当選したということだが、それをもって解約の事由にあたるということでは契約上はないと考えている。もし様々な理由で解約するということであれば、解約に伴って、我々がこの契約で将来的に得るはずであった事業収益や利益を損害として賠償責任を市に負っていただく必要が出てくる」

事業の遅れによる コストアップや資材高騰、一度結んだ契約を解除するのにかかる賠償金の額はわかっておらず、建設する場合もしない場合も、かかる費用の総額ははっきりしないままです。

今回の住民投票について、政治学の専門家は…

(愛知学院大学・森正教授)
「有権者に対して今回の事業のメリットやデメリットを示すような中立的な資料や評価する機関がない中なので、結局どちらの資料を信じるかという話にこの住民投票がなってしまっている。両者が一堂の場に集まって議論をする・ディベートをする場がない。非常に有権者にとっても判断が難しい住民投票になってしまっているということが指摘できる」

判断材料が足りないまま 突入する今回の住民投票。決着がついた後に新たな情報が出た場合、振り出しに戻る可能性はないのか?長坂市長に聞きました。

(豊橋市 長坂尚登市長)
Q継続の場合も中止の場合も総額いくらかかるのか分からない。この数字は出せない?
「出せないと思っている。未来予測の話になってしまうし、不確定なものが一定ある中で判断いただくことになると認識している」

Q結果が出た後に、これくらいの金額がかかると分かって、また揉めるのでは?
「私は心配していない。今回の条例は市長も議会もその結果を尊重することになっているので、結果を尊重して市政を進めていくことになる」

豊橋市を二分する初めての住民投票の行方は?投票日は参院選と同じ今月20日です。

CBCテレビ「newsX(ニュースクロス)」2025年7月8日放送より