ロシアが併合したウクライナ南部ヘルソン州の州都ヘルソンからロシア軍が撤退を始めたとみられます。ウクライナ軍の反転攻勢に押された形ですが、ロシアはヘルソン州の東南部地域の6割を死守し、クリミア半島への水源を確保するために軍を集中。さらに撤退した州都ヘルソンがウクライナ軍の攻撃の足場とならないように街を焦土化するだけでなく、罠を仕掛けたり、ロシア兵が市民になりすましたりして抵抗するおそれがあるといいます。大和大学の佐々木正明教授が解説します。

州都へルソンから撤退も…ロシア兵が市民になりすましか


ーーロシア軍が侵攻後、唯一掌握した州都ヘルソンから撤退を開始という情報があります。ロシア派はなおヘルソン州の60%を支配しているという情報もありますが、クリミア運河も維持しているというのがポイントでしょうか?
「撤退情報に関しても、SNSでかなり出回っています。私が直近で見る限りヘルソンにウクライナ軍が入ったという情報もあります。そして北クリミア運河をなぜ2月24日の軍事侵攻直後に支配したのか。ロシア軍にとって重要なクリミア半島にの基地にあります黒海艦隊を守るためなんです。そしてこの水源である北クリミア運河を維持したい。今回、北西側の州都ヘルソンを撤退して、東南側に移ろうとしているのですが、ここでも防御姿勢をとって北クリミア運河を死守する。クリミア半島を守るためです。ドニプロ川を自然のバリアに使ってウクライナ軍の攻撃を防ごうとしている節が見えます」
ーーウクライナのポドリャク大統領府長官顧問はtwitter上で『ロシア軍はあらゆるインフラ・住宅を破壊している』とロシアの罠を仕掛けた可能性ということも考えられています。撤退する際に地雷などを敷設、ロシア兵が市民になりすましていることも考えられますか?
「ウクライナ軍などもこのような情報をSNSで盛んに流しているんですね。ポドリャク大統領府長官顧問は『死の都市』というキーワードを出して、これはヘルソンをウクライナ軍が使えなくするようなことをやっていくのではないか、今後はヘルソンにメディアが入っていく可能性もあります。そしてここを拠点にして逆に、ウクライナ軍側はドニプロ川の向こう側にあるヘルソン州を攻撃していく拠点にしたいととなりますと、ここを『死の都市』にした方が撤退にあたってロシア軍にとっては有利にできる可能性があります。ロシア兵が市民になりすましたり、いろんな工作をしたりしてウクライナを邪魔していく可能性があるということです」

ーーSNSでは正しくない情報も出回っていますよね?
「情報一つでたくさんの見方がある。そして、どこがどの情報をどのような意味で流しているのか、特にロシア側ですね。ずっと情報を遮断してきた国ですので、ロシア国内にロシア軍に不利な情報を流しているとなると、これまで流していなかった情報をプロパガンダとして流す意味は何なのだろうか。この深読みが今後必要になってくると思います」