V長崎 高木監督が語る昇格への道

V・ファーレン長崎の高木琢也監督が2連勝という好スタートを切り、自動昇格圏内との勝ち点差を縮めています。7年ぶりに監督に復帰した高木氏が、チームの現状や今後の展望について語りました。(聞き手 岸竜之介アナウンサー)

「勝つことって本当に難しい」——2連勝スタートの喜びは?

Q:2連勝スタート、おめでとうございます。喜びを噛み締めていらっしゃるんですか?
A:いや、噛み締めることはないと思いますね。チームは、まだまだ順位的にも、勝っていくしかJ1昇格へという道はないので、1つ、2つ勝っただけで喜ぶことはできません。ただ、勝つことで選手たちもやはりそれが自信につながっていくというのは見ていて感じる部分もあるので、それは本当に良かったと思っています。

Q:高木さんご自身はV・ファーレンの監督としては7年ぶりの復帰になりましたが、2連勝スタートできたというのは大きいですよね。
A:「もうかなり大きいと思いますね。勝負は水物と言われますが、それくらい本当に勝つことって難しいです。しかもアウェイの地で、山形さんに関しては"強敵"と言われるくらいのチームだったと思うんですよね。なかなかクラブとしても勝てない相手だったんですが、そこでしっかり勝てたということで、いい状態でホームゲームを迎えることができたと思っています。」

「フロントサイドを経験して視野が広がった」——7年ぶりの監督復帰

Q:改めて、高木監督というポジションに戻るという想定みたいなのはあったんですか?
A:いや、そういうのは全くなかったですね。私の中では「いつかはできるか、時があれば」という感じではありましたが、全く想定していない状況でした。自分が一番驚いていた部分はあったと思います。でも、ずっとやってきた仕事でしたので、特にそんなに難しさは若干ありますが、時間とスタッフの人達で問題は解消されていきますね。

Q:CROであったり、代表取締役を務める立場であったりと活躍されていましたが、また監督として戻って、チームとの接し方や関わり方は変わりましたか?

A:「そうですね。フロントサイドというところを経験して、どういう形で支えられているのかとか、長崎県全体、そしてファンやサポーターの皆さんとどんな関わり方をしているのかということがよく見ることができました。選手たちやチーム自体が勝ったりとか、触れ合うことによって、どういう効果が現れていくのかとか、そういうことを本当にたくさん学ぶことができたので、少し違った目線というか、高くなったかなと思います。」

「目線が変わった」——監督就任前のスタンド観戦

Q:監督就任前にホーム戦で高木さんが試合を見られる時に、記者席の後ろの列の方でメモをしながら見ていたという情報をゲットしたんですが、どういうことをメモしながらご覧になっていたんですか?

A:私もずっとこの世界で生きてきたので、今シーズンから実行委員という形でチームとは関わっていましたので、試合会場に行って観戦する機会がありました。せっかくなので、ライブで見れることをいかして、いろんなものを残しておきたいという、本当に自分の趣味の一環みたいなものでやっていました。

Q:それは相手との戦術対応を見ていたわけではなく?
A:「それも、もちろんチェックしていました。それはもう難しいことではないので、我々にとっては。」

Q:そのメモが今の監督業に活きたりしているんでしょうか?
A:「うーん、パーセンテージで言うと多分10〜20%くらいですよ。ただ、そういう風に見ていたという思考回路は全然変わりましたね。また今までそういう部分では離れていた部分もあったので、自分の脳をそういう風に起こしたということは良かったのかもしれません。」

「実際に選手を間近で見ると全然違う」——高レベルな選手層

Q:監督復帰戦が熊本戦で、最初のゴールが澤田選手、その次がフアンマ選手。以前、高木さんがJ1昇格へと導いたメンバーがゴールを決めて、サポーターは胸が熱くなったと思いますが、どう感じられましたか?

A:そうですね、やはり澤やフアンマが点を取ってくれたのはすごく嬉しかったですけども、最初のスタートのゲームだったので、点を取ること、勝ち点3を取ることが1番喜びの先にありました。そういう意味では最終的に勝ち点3を取れて、その経過として澤やフアンマが点を取ってくれたという流れになったので、その時その時の得点はすごく誰よりも嬉しかったですね。

Q:選手層も厚い。選手選考も難しいんじゃないかなと感じるんですが、いかがですか?
A:「いや、難しいと思います。外から見ていた時と、実際にピッチに入って選手を間近で見る目線では内容が全然違っていて、"やっぱりこれはすごいな"と観察していました。レベル的には本当に高いんだなというのを改めて感じました。そういう選手たちがたくさんいるということで、起用の仕方は難しさがありますが、チームが勝つための人選だということは、ぶれないようにしています。」

「選手たちはインテンシティ高く練習している」——チームの現状

Q:実際にチームに入ってみて、練習に入ってみて、こういうところも高めた方がいいんじゃないかなと感じた点はありますか?
A:それが、実際にチームに合流した時に、インテンシティとか強度という部分はもう少し必要じゃないかなと思っていたんです。ただ、実際にやってみると選手のみんなが結構やっているので、そういうことを強調して言うこともありませんでした。例えば、失点に関しても同じです。誰が見ても失点が多いというのはわかるんですが、失点を減らそうとか、失点をしないようにということを一度も言ったことはないんです。そういう部分も選手の危機感というところでだいぶ変わっていくんじゃないかなと思っています。

Q:以前は高木さんのチームはすごく走る練習が多いというイメージがあるんですが。
A:「今は走る練習はそんなにしないです。僕、陸上部じゃないから。」(笑)「それはあんまり...もっと古い話ですね。もっともっと古い話です。」

「チャレンジしていきたい」——J1昇格への意気込み

Q:2連勝したことによって自動昇格圏内との勝ち点差が10あったのが今6に縮まっていますが、選手の意識も上がってくるんじゃないですか?
A:どうしても数字というのは一番選手たちにとって分かりやすい部分です。プレーのベースというか、こういうプレーをやっていくと、こういう形でチームとして表現ができて、そして得点を得ることができるんだということを、この2試合でいくらか感じてくれたと思います。そのベースの上で、もっともっと1人1人が10%頑張れば、もっともっといいゲームができて勝利も近づくことにつながっていくということを考えられれば、ベース作りとしてもすごくいいことだと思っています。

Q:勝ち点を6ポイント積み重ねて、次がホームに戻ってくるわけですが、ここへの期待感は高まりますね。
A:「そうですね。お客様もだいぶチケットの売り上げはいいと聞いていますし、選手たちもやはり2連勝した状態でホームゲームに戻ってこれたというのは、すごくやりがいがあり、"ここでもう一回やってやろう"という気持ちでピッチに立ってくれると思います。その姿勢をぜひ見に来てほしいと思っています。」

Q:5日はスタジアムで1万8000人の観客を目指しているようですね。
A:あの、はい、なんとか来てほしいですね。

「恐れずにチャレンジしていきたい」——シーズン後半に向けて

Q:やはりあれだけ立派なスタジアムが昨シーズンの終わりにできて、今年はJ1昇格が期待されています。改めまして今シーズンにかける意気込みを聞かせてください。
A:私自身が監督という仕事を受けた時も、クラブとしての目標も本当にJ1というところを常に考えながらやってきたと思います。その力に少しでもなれるようにということと、私自身がこのチームを率いたタイミングで言うと、失点の問題や順位、勝ち点も含めて、これからどんどん上げていかなければいけない状況です。とにかく積極性と攻撃的な姿勢を崩さずに、何事にも恐れずにチャレンジしていきたいと思っています。

Q:シーズンオフに高木さんの2回目のJ1昇格をみんなで味わいたいと思います。引き続きよろしくお願いいたします。
A:「ぜひ頑張りますね。よろしくお願いします。」

高木監督の指揮のもとホームで3連勝を飾れるかー。
11位、大分との九州ダービーは7月5日午後6時キックオフです。