イスラエルとイランの停戦の一方、攻撃が続いているのがパレスチナ自治区ガザです。住民に対する新たな退避命令も出ていて、情勢のさらなる悪化も懸念されています。

イスラエル軍は29日、ガザ北部のガザ市などの住民に対し、南部への退避を求めました。

街の中心部にまで侵攻範囲を拡大させるとしていて、イスラム組織ハマスとの戦闘を激化させるものとみられます。

イスラエルはイランとの交戦中、そして停戦後も変わらずガザへの攻撃を続けていて、支援物資の配給拠点周辺ではこの1か月あまりで580人以上が死亡したと伝えられています。

国連 グテーレス事務総長
「家族を養おうとしただけの人々が殺されています。食料を求めることが死刑宣告になってはいけません」

ガザの人たちにとって不可欠な物資の配給でなにが起きているのか。

イスラエルの有力紙「ハーレツ」は兵士らの証言として、集まった住民らを追い払うために意図的に発砲するよう命じられていたと報じました。

ネタニヤフ首相とカッツ国防相は声明でこれを否定し、「軍の名誉を傷つけるための悪意のあるうそだ」と非難。「兵士らは無実の人たちを傷つけないよう、明確な指示を受けている」としています。

ガザ住民
「これは援助ではない。死のわなだ」

配給はイスラエル政府の関与のもと、アメリカが主導して設立した団体が行っていて、専門家はイスラエル側の思惑をこう推測します。

放送大学 高橋和夫 名誉教授
「(ガザ地区の)中部・南部にだけ配給の場所を作って、ガザの人たちを北から南へ移動させようとしたのではないかとみられています。ただ単に攻撃するだけではなくて、その後にガザの人達を完全に排除して、そこ(北部)をイスラエルの支配下にもう一度置きたいのではないかというのが、1つの解釈です」

急がれる停戦と注目されるガザのその後…

アメリカのトランプ大統領はイランに加え、ガザでも近く停戦が実現するとの見通しを示していますが、高橋教授は…

放送大学 高橋和夫 名誉教授
「括弧付ですが、ネタニヤフ首相がイランで勝ったというイメージを打ち出していますから、ガザでは少し引いてもいいかなという雰囲気が出てきました。アメリカが圧力をかけようとしている。イスラエル国内の情勢も動いている。(イスラエル)軍の方は、すでに兵器も兵隊も疲れているので、やめたいというメッセージを出していると思います」

イスラエル軍の参謀総長は、「近い将来、我々が定めた地点に到達する」としていて、停戦交渉に動きがあるのか注目されます。