地域で使っている温泉の熱を活用して、ある南国フルーツを栽培しようという試みが安曇野市で始まっています。そのわけとは?
フルーツが育てられているのは、安曇野市穂高の山あいの地区。
「ここにあるのは何ですか?」「こちらは“バナナ”です」

そこにあったのは、高さ50センチほどの植物。これが、南国フルーツの代表格“バナナ”の苗だというのです!
松岡朝香さん:「4月下旬に植えだして今、結構葉っぱも植えてから2~3枚出てきて、ちょっと背が高くなったところです」
松本市梓川のリンゴ農家、松岡朝香さん。このプロジェクトの発起人です。

松岡朝香さん:「何か趣味でバナナ作りたいっていうよりは、これが農業として確立していけたらなっていうところで真剣に考えています」
結婚をきっかけにリンゴ農家になって15年。生産方法や労働力、収益の面で、より“持続可能な農業”のあり方を模索してきたといいます。
そこで出会ったのが「バナナ」。
南国ではジャングルに自生するほど生命力が強く、実は、とても栽培しやすい植物だといいます。

松岡朝香さん:「海外から来るバナナは、やっぱり輸出するために栽培時も栽培後の輸出するためにも農薬を使っていて、(国内で作る)このバナナは無農薬で基本的にできるというところがやるにあたってすごくひかれているポイント」しかし、そんなバナナにも1つだけ条件が。
それが「温度」。
年間を通して20度から35度くらいの栽培環境をキープする必要があるのです。ただ、燃料を使って暖房するのでは元も子もありません。

そこで…
「下に温泉のお湯をホースを通じてはわせて、熱をとってます」
苗の間にはわせたホースの中を通るのは、湯温65度ほどの温泉!これにより、ハウスの室温を上げることができるのです。しかもこの温泉、わざわざ引いてきているわけではありません。

穂高温泉供給 曽根原悦二さん:「中房地域の源泉から、ここに温泉がまず入ります。全部で6基ありますけども、総量で2万5000トンという量ですね」

近隣の施設や住宅など1500軒に供給するため、20キロ離れた源泉から引いた温泉を貯めている、貯湯槽。
温泉供給会社の協力で、そのすぐ隣にハウスを建て、余って川に流す分の温泉を熱源として使わせてもらっているのです。

バナナを栽培したい松岡さんと、温泉の新たな活用を模索していた供給会社。
その両者を結びつけたのが、松本大学の矢内和博准教授です。

松本大学 矢内和博准教授:「カーボンニュートラルだとか地球温暖化だとかって考えた時に、お金かけてやる分は何でもできるんですよね。なんですけどやっぱり、いわゆる地域資源と言われているものを上手く活用できた人が勝ち組になるだろうと思っていて、そういうこと開拓していく役割がうちの大学の使命かなと思って」
他の農家の協力も得て、今年4月にハウスを設置。
1年目はまず試験的に、11本の苗を栽培することにしました。
朝晩冷え込む時期も温泉の熱で無事に乗り切り、苗は順調に成長中。
今は1日1回、水やりし、冬に向けてより効率的な温度の管理などを試すことにしています。早ければ来年の春には、初めてのバナナがとれる想定です。
松岡朝香さん:「もし日本で作れたら、安曇野で作れたらっていうところは本当にメリットというか、みんなの大切な食べ物の一つになれそうな可能性を感じてます」

未来への希望をのせた、「温泉バナナ」。挑戦は始まったばかりです。