今から80年前、沖縄戦を指揮した日本軍第32軍の牛島満司令官が自決する直前に詠んだとされる「辞世の句」。軍中央によって戦意高揚につながる文言に書き換えられていたことが、沖縄戦研究者の調査で明らかになりました。

書き換えられた句と本来の句は下記の通りです。

▼牛島司令官が読んだとされていた辞世の句(書き換えられた句)
「秋を待たで 枯ゆく島の青草は 皇国の春に甦らなむ

▼牛島司令官が大本営に送った辞世の句(書き換えられる前)
「秋をも待たで 枯れゆく島の田草は 帰る御国の春を念じつつ

牛島司令官が自決前の自らを取るに足らない存在だと例えた「田草」が、国民を表す「青草」に。徹底抗戦を呼びかける意味合いが強まっています。

公文書を調べ、書き換えを突き止めた研究者、吉川由紀さんはー。

▼吉川由紀さん(沖縄国際大学 非常勤講師)
「青草がよみがえる、よみがえってほしいとあたかも牛島が言ったかのように書き換えた。軍の中央部で、この中身では本土決戦に向けて国民の戦意高揚に役立たないと思われる文言については、ことごとく書き換えがされたという理解です」

吉川さんによると「辞世の句」と共に陥落寸前の沖縄の戦況を伝えるために送った「決別電報」も、複数の言葉が書き換え、あるいは消されて報道されたことも判明しました。

▼吉川由紀さん(沖縄国際大学 非常勤講師)
「正しい情報が伝わらないわけですから、沖縄の住民がこれほど犠牲になっているという認識はまず伝わりません」

沖縄の陸上自衛隊第15旅団は「資料によって記述が一部異なっていることは承知している」として、書き換えを認識していることを認めていますが、書き換えられた辞世の句は現在も旅団のHPに掲載されています。

当時の軍が改ざんした資料の掲載を続けることについては、各種記録などを踏まえ、引き続き掲載内容を検討していくとしています。