20日、広島を訪問している天皇皇后両陛下は、広島市安佐南区にある「豪雨災害伝承館」を視察されました。両陛下をご案内した館長の思いを聞きました。

広島市豪雨災害伝承館 高岡正文 館長
「(Q.緊張が大きいですか?)大きいですね。一生に一度あるかないかですもん」

「豪雨災害伝承館」館長の高岡正文は、天皇皇后両陛下の訪問を前に緊張を口にしていました。

高岡正文 館長
「(案内に)あんまり長い時間かけられないし。ちょっと緊張しています。あと1週間になっちゃった」

「伝承館」は、2014年の広島土砂災害で被災した住民が運営に関わっています。広島土砂災害では集中豪雨による土石流が多発し、災害関連死を含めて、77人が亡くなりました。高岡さんは当時、自宅で妻と娘と3人で暮らしていました。自宅には、土石流の土砂が流れ込みましたが、3人とも無事でした。3か月経ったその年の12月。まだ爪痕の残る被災地を当時の天皇皇后両陛下、現在の上皇ご夫妻が視察されました。両陛下が訪れた土石流あとの渓流付近で、高岡さんは自宅の復旧作業をしていました。

高岡正文 館長
「ぼくはね、全壊した自宅の後始末をしていて、実際に近くでお顔を見ていないんですよ。お帰りになるときに、道路の近くに行ってご挨拶しましたけどね。やさしい笑顔で会釈していていただいてうれしかった」

あれから10年余り。渓流の山側では、巨大な砂防ダムが完成しました。復興も進み、地元の世帯数は被災前の水準まで回復しています。

高岡正文 館長
「堰堤ができたんで、安全だからって引っ越してくる人が増えつつある。大体減ったままよ。まだ、回復はしてない。みんな立ち退いてるし。だけど、みなさんに申し上げているのは、100%安全ってないのよと。リスクは少なくなっているよと」

「伝承館」は、2年前にオープンして以来、当初の目標を大きく上回る4万人が訪れました。当時を知らない地元の子どもたちが、防災について学ぶ場にもなっています。そして、両陛下の訪問を前に注目度は高まったそうです。

高岡正文 館長
「だいぶ変わったね。来られる前に見ておこうとかね。みなさん注目していただいて、それがうまく防災や命を守る行動に結びついてくれたらいいんだけど」

高岡さんは、これからも自らの経験を基に、「命を守る行動」や「生き延びた後の生活」について、多くの人に伝えていきたいと話しています。