40秒差の2位にはHondaが、アンカーの小山直城(26)の区間賞で3位から浮上した。Hondaから16秒差で日立物流が続き、12位の埼玉医科大学グループまでが来年元旦のニ
ューイヤー駅伝出場権を得た。
小さな誤算はあったが3区までで富士通が好位置に
富士通は1区(11.6km)に坂東悠汰(26)、3区(16.5km)に塩尻和也(26)と五輪代表経験選手を前半に投入したが、2人とも区間賞を取ることができなかった。坂東は完全に全員からマークされ、坂東が前に出なかったため超スローペースになった。走力勝負でなく、駆け引きや最後のスプリントの勝負に。
「ラスト4kmでアップダウンがあります。そこが終わってスパートしましたが、(スロー
だったため)思ったほど集団がバラけず、(中継所前の)最後のスパートに脚が残って
いなくて競り負けました」
区間賞はHondaの小袖英人(24)で34分27秒。同タイムの区間2位がGMOインターネットグループの村山紘太(29)で、坂東は2人から2秒差で続いた。
坂東は東京五輪代表。手放しでは喜べないが「チームに良い流れは作れた」ことで、2区(8.0km)のキメリがヤクルトと同タイムではあったが、3区へトップで中継した。
3区は最長区間。すぐに富士通、ヤクルト、SUBARUの3チームが集団になった。塩尻
は「練習ではそこまで前を引っ張るタイプではない」(高橋健一監督)が、東日本実業団
駅伝では3人の先頭を走り続けた。
「タスキをほぼ先頭でもらって、周りに合わせて走って行くよりも、後ろ(4位以下)と
の差を広げることを意識して積極的に行きました」
塩尻は向かい風の中を15.5kmまで先頭を積極的に走り続けた。だが先頭を走ることによる消耗は大きく、最後はSUBARU・照井明人(28)とヤクルト・中村大聖(24)に先行された。
「自分がもっと走れていれば2人を引き離せました。そこは力不足でしたが、最低限の役
割は果たせたかな」
塩尻はSUBARUから5秒差で4区(9.5km)の横手にタスキを託した。
横手の好調の理由は?
3位でタスキを受けた富士通4区(9.5km)の横手は、すぐにSUBARU、ヤクルトと集団を作ると、3km過ぎで前に出てリードを奪い始めた。その後も手を緩めず、5区への中継では2位のヤクルトに52秒、3位に上がったHondaに55秒差とした。「去年の優勝時は7区で、前の6人がすごく良い位置でタスキを持ってきてくれました。少し楽をさせてもらったので、今年は自分が流れを作りたかったんです。タスキをもらった位置もよかったし、自分のコンディションも上がってきていたので、攻める走りができました。何より、チームの優勝につながったことがうれしいです」
好調の理由は、ケガや体調不良を繰り返してきた横田が「やっと練習を継続できて上積みができたこと」が一番の要因だ。
さらに来年のマラソン出場を見据え、距離を走るメニューを増やした。「基礎が固まり
ました。体重が1kg増え、お尻がしっかり使えるようになりました」。
富士通は横手が50秒以上のリードを奪ったことで、5区以降の展開が楽になった。5区(7.8km)は距離こそ短い区間だが、当初はここでリードを奪うプランだった。東京五輪5000m代表だった松枝博輝(29)が2位との差をキープした。6区(10.6km)は2年目の塩澤稀夕(23)、7区(12.9km)はルーキーの飯田貴之(23)と、実業団駅伝初出場選手がタスキをつないで1位でフィニッシュした。
高橋健一監督は勝因に「今日のメンバー以外も仕上がりが良く、誰を落とすか迷ったくらいにチーム全体の状態が良かった」ことを挙げた。そしてニューイヤー駅伝に向けては「前回(12位)と同じ失敗をしないように」と話す。
1年前は東京五輪マラソン代表だった中村匠吾(30)を4区に起用したが、区間26位で19位まで後退。5区にマラソン日本記録保持者の鈴木健吾(27)を起用したが、区間10位だった。
「ニューイヤー駅伝は距離が長くなるのでどうしてもマラソン組を使いたくなりますが、
前回はそれで失敗しました。今回はマラソン組に頼らず、今日のメンバーにプラス数名で
ニューイヤー駅伝を戦いたい」
2年前のニューイヤー駅伝優勝は、4区の中村でトップに立ち、6区の鈴木が区間賞で優勝を決定づけた。しかし前回は、状態が上がらなかった2人を半ば強引に起用して失敗した。2人の状態次第で2年前のように成功することもあるが、高橋監督は早めに決断し、マラソン選手は個人の目標に集中しやすい状況を作っている。
富士通が新しい戦い方を、ニューイヤー駅伝で試そうとしている。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)
※写真中央が横手選手