「約20年もの長期間にわたり、多くの役職員が関与して多数回の犯罪的な不正融資が行われたという本件は、我が国の金融機関の歴史を見ても類例をみないほどに悪質な事案」。第三者委員会から稀にみる厳しい指摘を受けた福島県いわき市にある金融機関「いわき信用組合」で、いったい何があったのか。
243ページの報告書…不正の数々指摘
地方金融機関の前代未聞の巨額の不正融資の第三者委による調査報告書は、243ページにも及ぶ膨大なものだった。
いわき信用組合はいわき市の沿岸部、小名浜に本店がある金融機関で、前身の信用組合は1948年に発足。現在、いわき市と楢葉町に15店舗を構え、従業員は約180人、4万人あまりの組合員がいる。預金残高は福島県内に本店を置く4つの信用組合の中で最大の2041億円にのぼる。また、東日本大震災の被災地にある金融機関として2012年、被災地の経済を支えるため、200億円の公的資金が注入された。

いわき信用組合は24年11月、およそ10億円の不正な迂回融資などがあったとして、弁護士や公認会計士による第三者委(委員長:新妻弘道弁護士)に調査を依頼。5月30日、およそ半年にわたる調査結果が公表された。今回、第三者委が指摘した、主な点は以下の通り。
・大口融資先の経営悪化を隠すため、約20年前から不正融資を開始
・不正融資の総額は少なくとも1293件、247億円
・不正融資の償却のため、07年から無断で一般顧客の名義260人分の口座を無断で開設し約18億円を流用
・約8.5億円から10億円の使途不明金がある
・元職員による2度の横領を隠ぺいし、損失金計約2億円を穴埋め
・不正融資の証拠品を処分するなど真相究明に真摯でない
地方の金融機関が重ね続け、隠したかった不正融資の発端は何だったのか。