琉球大学理学部の伊藤耕介准教授が、台風の予測における研究で、気象学の若手研究者に贈られる「正野賞」を沖縄で初めて受賞しました
という事で、気象予報士の松澤まゆ さんが台風のスペシャリスト、伊藤先生に台風研究の最前線と目指す成果を伺ってきましたー
松澤まゆ 気象予報士
今回は台風予測におけるどのような研究で正野賞を受賞されたのでしょうか」
琉球大学理学部 伊藤耕介 准教授
台風と海の関係がよくわかるようになったということと、観測データを使ってどうやったら予報がよくできるかという研究で賞を頂きました。
今までは、海面の水温が非常に大事だと言われてきたんですが、実際台風は海の中をかき混ぜながら進んでいくので実は海の中の温度が温かいことも大事だと分かってきました」
非常に難しい台風の予測。伊藤先生は日本人研究者として初めて、航空機で台風の中に入る「直接観測」に成功しています。
伊藤准教授「これがドロップゾンデというもので、飛行機から下に落とします。これを使って台風の中の状態がどうなっているのかを調べます。
気象庁が言っていた中心気圧と実際に測った中心気圧がだいぶ違っていたということが分かりました。だいたい10〜15ヘクトパスカルくらい違っていました。」
さらに、近年の台風の特徴についても聞いてみました。

実は当日の朝まで台風の「目」に入る予定はなかったそうで、「怖いですよ」と振り返っていました。

松澤まゆ 気象予報士
「最近、沖縄に強い台風がこなくなったという声を聞きますが、実際どうなんでしょうか。」

琉球大学理学部 伊藤耕介 准教授
実際データをとってみるとそんなことはないと思います。ただし、昔に比べると例えば家が頑丈になって、昔みたいに台風で怖い思いをすることは減っているのかもしれません。
また、本当にちょっとずつではありますが、台風が発生する位置や発達する位置は西や北西側にずれてきていて、東京でみてみると最近の方が昔よりも強い台風が襲っている傾向があったりします」
松澤予報士「ズバリ、台風の予測は今後どこまでいけると思いますか」
伊藤准教授「簡単には答えられないですが、例えば最近やっている航空機観測を増やしたり、
あるいは天気予報に使っている物理学の知識がどんどんよくなっていくことで、まだまだよくできると考えています」
伊藤先生の目指す姿とは?
「究極的には(台風で)亡くなる方がいないような社会ですね。台風の予報はもちろん防災や減災の全てではないです。いろんな方の協力があってできることですが、台風の予報が正確になるということはそれの基本的な非常に重要な情報だと思っています。
その意味でもこれからも頑張っていきたいと思います。」
【記者MEMO】
伊藤准教授が台風の研究を始めたきっかけは「人の命が守れる仕事がしたい」ということだったそうです。