永井さんは、自立や就労を支援していて、”人とのつながり”や”働く力”を育もうと、実践的な取り組みを行っています。
永井 佐千子さん:「走り出してから何か変わった?」
優(ゆう)さん(仮名):「精神的な状態が良くなった」
3年前から「めぶき」に通っている長野市の優さん(仮名)は25歳。

優さん:「めぶきに来るまで孤独感を感じていました」
優さんが孤独を感じるきっかけとなったのは、小学生の頃に受けた言葉の暴力でした。
優さん:「きもいとか死ねとか言われたんですが、自分の感情にふたをして、抑えなきゃと思って(生きて)きた」
中学以降も悪口や偏見にさらされ、次第に人との距離を置くように。
優さん:「人と話すのも苦手だったし、いろいろなトラウマがあったからそういうものから避けたいという思い。中学のときに暴れてしまって、母が学校にたくさん呼び出されてしまって、好きだった仕事を辞めざるを得なくなってしまったんです」
人と向き合うことに恐怖を感じ、孤独は外への攻撃的な態度となってしまうこともあったといいます。
同じく「めぶき」に通う22歳の渡邉さん。渡邉さんも同じように、過去に誹謗中傷を受け、心に傷を負いました。

渡邉さん:「嫌なあだ名を作られたりして自分に自信を無くしてしまった」
記者:その時の記憶は?
渡邉さん:「忘れられないですね」
気づけば、誰かと自分を比べて常に抱えていた劣等感。
長い間、悩みを抱えてきました。
渡邉さん:「孤立じゃないですけど、一人でいる時間が私は多くて。相談をするという考え方が当時はなくて。辛かった」
生きづらさを感じていた2人ですが、永井さんと出会うことで変化があったといいます。
学び舎めぶき代表・永井佐千子:「人と関わる、人と話す、いろいろとにかく経験を積んでいくという中で、やっぱり自分は自分でいいんだ、自分の役割とか、何かそういったものが見えてくると、そこが自分の居場所になっていって、自信につながっていく」

永井さんは若者たちがやりたいことを見つけて取り組めるような後押しを続けています。
優さん(仮名):「無心になってやれるので、過去を忘れられるというか前向きでいられる、楽しいから」
永井さんの勧めで優さんが取り組んだのは、切り絵のアート。
次第に作品作りにのめり込み、アーティストとして活動することを決意しました。
文字は優さんの母が手がけていて、自分がきっかけで仕事を辞めざるをえなかった母親への気持ちも作品に込めています。

優さん:「この活動することで、母の書道がまた誰かの目に触れる機会が増えれば、嬉しいかなという思い」
一方、手先が器用な渡邉さんも、アクセサリー作りや手芸に没頭。「めぶき」が開いたマルシェで、商品の販売も経験しました。
渡邉さん:「とにかくやってみるというのが大事ではないかなと思っている。そこで孤独だなと思うより先に動いてみて、孤独じゃなかったという方がずっと楽しかったりするんではないかと思う」
社会との接点ややりがいを見つけるきっかけづくりが大切ということですが、青木被告の両親も、孤立していた息子のために青木被告の名前をつけた農園を開いたり、経営する店を手伝わせたりしていたといいます。
状況によっては、「めぶき」のような自立を支援する組織に助けや助言を求めたり、また、こうした組織自体を社会が支えていくことも必要だといえそうです。