―――日本人2人を含む150人超が死亡したソウル・梨泰院の群集事故。日本人観光客にも人気のエリアで、飲食店、バーやクラブなどがある賑やかな通り(世界飲食文化通り)と地下鉄の梨泰院駅を繋ぐ路地が事故現場です。道幅が約3m、奥行き約40mの細い下り坂で、何が起きていたのでしょう。「群集事故」に詳しい東京大学大学院の廣井悠教授の解説です。

―――可能性①「群集が前の方向に倒れた」。これは1㎡当たり3~5人の空間で発生、誰かがつまずくなどのきっかけで前方向に倒れ込んだというケースです。

厳密には1㎡3~5人から発生しうるってことで、それ以上高い密度でも、このような現象は発生します。メカニズムとしては、基本的にある程度人の流れがあるところで、何らかの原因でどなたかが倒れて、その後から人が止まれずに前の方にどんどん転倒が波及するタイプです。群集事故としては最も多いタイプで、そういう可能性が一つあるかなと思います。

―――可能性②「群集雪崩が発生」。群衆の真ん中にいる人が倒れますと、倒れた人を中心に周囲の人たちがどんどんと巻き込まれて倒れていくという現象です。

1㎡当たり10~12人がいる場合に発生し、気絶したり倒れた人を起点に、転倒が前の方ではなく、円形もしくは楕円状に広がるという点と、あと極めて高い密度です。1㎡10人以上で発生します。

―――梨泰院の映像では10~12人にはなっている可能性がありますか。

そうですね、事故が発生したときにどれぐらいの密度だったのかわからないのと、①の現象も、1㎡10人でも起こりうるので、どちらが起きたかちょっとわからないんですけれども、1㎡って電話ボックスの面積ですからそこに10人いるという状況を考えると極めて密度が高い。2001年の明石の歩道橋の事故は群衆雪崩タイプだと言われています。

―――こちらは360度に広がって人巻き込むというのも恐ろしいですね。

きっかけとしては、胸部とかに非常に強い圧力を受けて、気絶したりとか、気を失ったりして倒れ込んで、そこを起点に四方八方に人が折り重なるといったタイプです。