先日、プロフィギュアスケーターの村上佳菜子さんが、出演したYouTubeチャンネルで「多嚢胞性卵巣症候群」であることを告白しました。なかなか身近では聞き慣れない病名ですが、妊娠を希望する女性にとって気になる病気の一つです。
多嚢胞性卵巣症候群とは?どうして不妊につながる?
なぜ妊娠を希望する女性によって気になる病気なのでしょうか?東京都にある順天堂医院の正岡駿医師に聞きました。
▼順天堂医院 正岡駿 医師
「婦人科疾患である多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovarian syndrome、略称PCOS」は、生殖可能年齢女性の約5~8%の割合でみられます」
沖縄県の10歳から49歳までの女性人口34万5160人(令和6年住民基本台帳年齢別人口 2025年1月1日現在)に換算すると、約1万7000人~2万7000人がこの病気を患っていると推定され、身近な病であることがわかります。
どのような症状があらわれるのでしょうか?
▼順天堂医院 正岡駿 医師
「主な症状は、無月経や月経不順、無排卵周期症(月経はくるが排卵をしていない)などの月経異常です。超音波検査で多嚢胞卵巣(ネックレス状に多数の小さな卵胞が連なっている)、また、血液検査で女性ホルモンや男性ホルモンの数値に変化がみられることがあります。そのほか、多毛や AMH(抗ミュラー管ホルモン:卵巣内の残りの卵子の数を予測するための指標)の高値からも診断されることがあります。現在のところ、多嚢胞性卵巣症候群のはっきりとした原因は分かっていません。なんらかの影響で排卵が妨げられるため、妊娠が難しくなってしまうのです」
不妊を取り巻く状況 多嚢胞性卵巣症候群による不妊の現状は?
では、多嚢胞性卵巣症候群を発病した女性の妊娠・出産の状況はどうでしょうか。
▼順天堂医院 正岡駿 医師
「これまでの調査では、多嚢胞性卵巣症候群の女性は自然妊娠率が低下し、不妊治療にも抵抗性を示す場合があります。しかし、早めに症状に気づいて受診し、排卵誘発剤などの治療によって、妊娠率が改善する可能性があります」
また、思春期の頃から月経が周期的にこない状態をそのままにしていて、妊娠を希望した時に初めて知る方も多いそうです。思春期の子どもの場合、親が気づいて早めに受診させることで、多嚢胞性卵巣症候群の症状を自覚することができ、将来、子どもが自分の家族計画を考える手助けになります。
わたしたちができることとは
私たちが日常生活でできることはあるのでしょうか?
▼順天堂医院 正岡駿 医師
「近年、妊娠・出産を望む年齢が上がり、不妊で困っている方も増えています。妊娠活動を行ってもうまくいかずに悩んでいる場合は、早めに婦人科を受診してほしいです。また、多嚢胞性卵巣症候群に限らず、妊娠出産に影響する疾患もあります」
正岡医師は、妊娠を考えながら健康と向き合うことの大切さを訴えています。
▼順天堂医院 正岡駿 医師
「最近、プレコンセプションケアという考え方があります。プレコンセプションケアとは、将来の妊娠を考えながら、女性やカップルが自分の健康に向き合うことを指します。妊娠を考える前から“○歳ごろから子どもが○人ほしい”などの家族計画を考え、ブライダルチェックなど妊娠に備えての健康診断を通して、自分の体のことを知ってもらえたらと思います」
私たちは月経(生理)について、小学校や中学校で習った知識のまま、自分なりの経験を積み重ねています。そして「これが普通だ」「他の人より軽いから問題ない」「むしろ生理が来ない方が楽だ」と、人と比べたり、忙しさのためにセルフケアを後回しにしてしまいがちです。
また、子どもの月経についても同じように考えてしまうことがあるかもしれません。知識を正しくアップデートして、不安なことがあれば医療機関を受診することをおすすめします。