戦後80年プロジェクト「つなぐ、つながる」です。戦後、日本人が極寒のシベリアなどに連行された「シベリア抑留」。その過酷な体験を100歳近くなった今も語り続ける男性がいます。
神馬文男さん
「戦争は絶対に反対だよ。いい戦争なんて絶対にないんだから。あるとしたら、うそっぱちだぞ」
札幌の神馬文男さん(99)。およそ60万人の日本人が強制連行され、マイナス30℃を下回る寒さや食糧不足の中での強制労働で5万5000人が死亡したシベリア抑留の生存者です。
海軍の偵察兵だった19歳の時、旧ソビエトとの国境に近い朝鮮半島の羅津基地で終戦を迎え、シベリアに連行されて森林伐採など過酷な労働を強いられました。
神馬文男さん
「朝起きたら、(隣で寝ていた人が)寝たままになってる。『おい』って言っても返事がない。よく見たら死んでいる。そりで縄で縛って運んで、すぐ近くの山を掘って埋める」
戦後80年、シベリア抑留を経験した人たちの平均年齢は100歳ともいわれています。
戦争を知らない世代に平和について考えてもらいたい。神馬さんは自らの足で札幌市内の高校などを回り、戦争の恐ろしさを訴えてきました。
神馬文男さん
「『爆弾を抱いてアメリカの船に突っ込め』と言われた。いい戦争なんて絶対ないのだから。だまされるんじゃないよ、自分の人生だ。正義の戦争なんてあるわけない、名誉の戦死なんてあるわけないんだ」
札幌南高校の生徒
「心の底から伝えたいという気持ちがすごく伝わってきた」
「自分を大切にしてほしいというのは本当にそうだなと思うので、これからも自分自身を大切にしていきたい」
シベリア抑留を経験した人は年々減っていて、今、北海道内で語り部をしているのは神馬さんを含め3人だけになりました。
このため、シベリア抑留を語り継ぐ札幌の市民団体では、貴重な証言を後世に伝えていく記念誌の発行に向けて準備を進めています。
シベリア抑留体験を語る会札幌 建部奈津子 会長
「実際の体験者の声がすごく貴重なので、胸に刻んでもらって、自分の身に起きたらどうなるのだろうと考えるきっかけになってほしい」
神馬文男さん
「僕らなんか惨めだったからね。そういう惨めな思いを今の子どもたちにさせたくない。大切なのはこれからのこと」
悲惨な体験が歴史の隙間に埋もれてしまわないよう、未来に向けた取り組みが続いています。
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