2024年10月、愛媛県宇和島市内で自宅の借家に放火したとして、現住建造物等放火の罪に問われている男の初公判が10日、松山地裁で開かれ、男は、起訴内容を認めました。

現住建造物等放火の罪に問われているのは、住居不定で、本籍が宇和島市山際の阿部安明(あべ・やすあき)被告(73)です。

起訴状などによりますと、阿部被告は、去年10月13日午後10時半ごろ、愛媛県宇和島市川内の自宅の借家内に灯油を撒き、ライターで火をつけ、全焼させた上、隣接する複数の建物に被害を与えたということです。
松山地裁で開かれた20日の初公判で、阿部被告は、起訴内容について間違いがあるかを問われ「ありません」と起訴内容を認めました。

検察側は冒頭陳述で阿部被告は、20年以上前に離婚した元妻と、犯行直前まで自宅の借家で同居していたと説明。
阿部被告が犯行の前夜、電話で息子と口論となった末、酒に酔って家の中で包丁を持ち出し、数時間にわたり元妻に詰め寄り、それに嫌気が差した元妻が、阿部被告の家を飛び出し、県外の親族の元に身を寄せていたことを明かしました。

その後、阿部被告は、合わせて9回、元妻の携帯電話に電話をかけたものの、元妻が電話に出ることはなく、悲観して自暴自棄になり放火に至ったと説明しました。
続いて行われた証拠調べの中では、元妻や親族の供述調書が読み上げられました。
その中では、被告が普段は温厚で物静かな性格だが、酒を飲むと暴言を吐くようになったり暴力を振るうことがあったと振り返り、過去には、元妻が包丁で手を切り付けられていたことや、長男がビール瓶で殴られ救急搬送されていたことなどが明かされました。

一方の弁護側は、起訴内容について大筋で争わない姿勢を示した上で、阿部被告が法廷で述べる後悔や反省の言葉などを聞いた上で「相応しい刑の重さを決めて頂きたい」と主張しました。
被告人質問で、裁判官から酒を止められなかった理由について問われると「自分の気持ちに負けた、意思が弱かった」などと述べました。

また弁護士から、犯行直前の飲酒後の状況について問われると「寂しさのあまり、酒がどんどん入りました」と回答しました。
この裁判は、21日に結審する予定です。