大規模な災害発生時など、より困難な現場での救助に向かう「特別高度救助隊」は全国の消防署に24しかない救助隊で、特殊な道具を使いこなす精鋭です。

日々、厳しい訓練を積む根底には、ある思いがありました。
災害現場でけがをした人や取り残された人たちを助け出す救助隊。その中でも、豊富な知識や経験を持つスペシャリスト集団が「特別高度救助隊」です。

熊本市中央消防署 特別高度救助小隊 渡邊誓亮 消防司令補(37)「通常の災害にももちろん出場するが、特殊災害や大規模な災害などに出場する」
熊本県内では唯一、熊本市消防局の中央消防署に設置されていて、隊員になるには救助隊の選抜試験に合格し、2年以上、経験を積む必要があります。
渡邊誓亮 消防司令補(37)「他機関と連携する合同訓練や全国規模の訓練などがあるため、いろいろな経験を積んでいることが重要」
特別高度救助隊でしか使えない特殊な道具もあります。大型ブロアー車もそのひとつです。

渡邊誓亮 消防司令補(37)「トンネルでの災害や地下道での災害に使われます」
有毒なガスが充満したり、煙で逃げ道が見えなくなったりしている現場で、風圧をかけて煙などを押し出し、救助活動を手助けします。
渡邊誓亮 消防司令補(37)「最大値で風速40メートル。人がただ立っているだけでは飛ばされてしまう。ちょっと踏ん張らないといけないくらいの風」
飛行機と同じジェットエンジンが使われているという大型ブロアー車。記者も体験してみました。

記者「風が強すぎて踏ん張っていないと体が持っていかれそうです」
体験した男の子も・・・
――怖かった?(頷く)
――もう一回やる?(首横に振る) ――やらない?(頷く)
この大型ブロアー車はこれまでに、トンネル内やごみ処理場での火事で実際に使われたことがあるということです。
そして、もうひとつの特殊な道具がウォーターカッターです。

村上広晃 消防士長(33)「ざっくり言うと高圧洗浄機のような水の勢い。プラス研磨剤を混ぜて切っていく」
可燃性ガスが充満した現場で、火花が飛ぶエンジンカッターを使うと、爆発する危険性があります。そうした時に、ウォーターカッターは火花を出さずにコンクリートや金属製のものも切断できるため重宝されるのです。
4月に入隊したばかりの2人はウォーターカッターを使うのはこの日が初めてです。
訓練で「今のでは切れていない 貫通せずに次のところに行っているのでしっかり貫通させてそこから下げていかないと」
熟練者の手本を見せ、見事、貫通しました。
田中大貴 消防士長(26)「ここにしかない道具がたくさんある。それを新たに覚えていかないといけないのでそこは大変」
林田貴政 消防士長(32)「コツがまだ掴めていないので頑張って習得したい」
村上広晃 消防士長(33)「いつどんな災害があるかわからないので、『要救助者のために』『助けたい』という気持ちだけ。それだけ思って訓練している」
他にも、かすかな音を頼りに救助を待つ人の居場所を特定する活動など、日々、様々な訓練を繰り返している特別高度救助隊。その活動の根底にあるのは熊本地震での苦い記憶だといいます。

渡邊誓亮 消防司令補(37)「救出できなかったという悔しさが残る活動の方が印象に残っている」
救助要請が相次ぐ中、命を救える可能性が低いと判断し心肺停止状態の人をそのままにして他の現場に向かったのは、その時が最初で最後でした。
渡邊誓亮 消防司令補(37)「最後まで諦めない。たとえ亡くなっていても絶対に救出するのがモットー。それをしなかった、できなかったのは今の活動の根底にある」
悔しさを糧に訓練に臨む隊員たち、その思いは皆同じです。
渡邊誓亮 消防司令補(37)「いつ災害が起こるかわからない。その中で私たち消防が最後の砦として、一つでも多くの命を救出できるようにこれからも準備していきたい」