福岡第一高校男子バスケットボール部を率いる井手口孝監督。数々の名選手を育て、高校バスケ界を牽引してきた名将が、世界最高峰のリーグ・NBAで奮闘した教え子、河村勇輝の1年目を振り返ってくれた。また、現時点での、今季の高校バスケ界の勢力図についても語った。

河村勇輝のNBA1年目

「今年の河村選手の活躍ぶりはどうでしたか?」

この質問に対し、少しの間を置いて井手口監督はこう答えた。

井手口監督
「Gリーグ、そしてNBAの中でも、ロスター争いを繰り広げるセカンドユニット、サードユニットのクラスでは通用するのが見えたかなと思いますね」

史上4人目の日本人NBAプレーヤーとなった河村勇輝。メンフィス・グリズリーズに所属した今季は、NBAと下部組織のGリーグを行き来するハードな生活。

そんな中でも、NBAのレギュラーシーズン最終戦では、自己最長の28分5秒のプレータイムで、いずれも自己最多の12得点5リバウンド5アシスト1スティールを記録した。特に、スティールから驚愕の背面パスで味方のダンクをアシストしたシーンは、今季一番のハイライトと言っても良いだろう。

一方で、この試合は主力が不在だったことも事実としてはある。

井手口監督
「W杯を見ても、フィンランドやカーボベルデといった国の選手相手には十分に通用していた。でも、シュルーダー(ドイツ)やミルズ(オーストラリア)と比較するとまだ足りない」

NBAでスタートを張るには、まだまだ課題があるとしつつ、173センチの河村だからこそできることへの期待も抱いている。

井手口監督「あの身長じゃないとできないディフェンスだとか、あの身長だからこそできることを突き詰めて欲しい。『小さいからこそ』って言われる選手になって欲しいですね」

今年3月、井手口監督は渡米し、河村と対面している。NBAというスターだらけの舞台に立った教え子だが、謙虚さ、素直さは高校時代と何ひとつ変わらなかったそうだ。

さらに、グッズショップに足を運ぶと「17番」のジャージは売り切れていた。異国の地でも認められる河村の人間性があれば、今後も間違いなく成長する、井手口監督はそう確信している。