熊本の最新トピックや話題のスポットを取り上げるセンニュウ!今回は、熊本市現代美術館で開かれている「やなせたかし展」の展示作業現場に潜入します!美術品を安全に管理するため、撮影が制限される中、舞台裏のギリギリまで取材しました。

4月21日、熊本市現代美術館では、5日後に迫った「やなせたかし展」の準備が始まりました。

熊本市現代美術館 冨澤治子 学芸員「今日は、作品がすべて美術館に届く日です。世界に一点しかないものを移動させるわけですから、みんな緊張して運んでいただいていますし、私どもも安全に届くかなっていうのを心配しながら待っている日です」

いよいよ、作品を乗せたトラックが会場に到着。熊本市現代美術館のギャラリーは3階にあるため、1階の搬入口からエレベーターを使って中へと運びます。

熊本市現代美術館 冨澤治子 学芸員「作品を迎える出入口というのは、セキュリティレベルの高い場所でありますので、基本、関係者だけが入る場所になってます」

美術品を安全に管理するため、カメラの持ち込みは厳禁。果たして無事に搬入されたのでしょうか?

1時間後。冨澤さんに案内されたのは…搬入を終えたばかりの会場です。

熊本市現代美術館 冨澤治子 学芸員「展覧会場の真ん中あたりに作品を集めたところです。 すべての展覧会の時に行いますが、一個一個の作品が長距離を移動していますので、傷ができたりしていないかどうかの作品のチェックを行う。額とかネジが緩んでないことを確認したら壁に展示します」

無事に作品の搬入が終わり、初日の作業は終了です。

3日後、再び、美術館を訪ねると、作品はすべて壁にかかった状態で、展覧会の仕上がりを左右する重要な局面を迎えていました。

作業スタッフ「下、どれぐらい明るくする?下で本読む場所です。じゃあMAX。あっ!ちょっと高いちょっと高い・・・あーOKですOKです、今ぐらいの方が・・」

やなせたかし記念アンパンマンミュージアム振興財団 仙波美由記事務局長・学芸員「絵に当たっているライトの明るさをはかっています。画材によって、照らしていい明るさがあり、長時間当てると、絵が色あせたりとか、変色したりする可能性があるのでそういうのを画材を見ながら、エリアごとに見ていました」

さらに、ライトを取り付けているのは、全国各地で美術品の輸送や展示などを専門に行う京都に本社を構えるアートトランジット社のスタッフです。 

熊本市現代美術館 冨澤治子 学芸員「美術の作品を運んだり、展示するような、訓練を受けた人が専門業者としていらっしゃるので、もちろん、私たち学芸員は、その方たちの作業を安全に行われているかを一緒に確認する立場ですので、共同作業で一つのチームとして行っていく」

それぞれの作品に合わせ、一つ一つライトを設置し、光の当たる角度を調整します。

アートトランジット社のスタッフ「壁や作品、空間をトータル的に見て、どのライトがいいか選んでやっています。ライトの一番明るいところがどこにあるのか、隣にある作品にライトがかからないこととか、そういうことに気を付けています」

ちなみに、絶対に壊してはいけない美術品を運ぶときに気を付けていることは?

アートトランジット社のスタッフ「持ち方とか、作品の弱点がどこにあるのかを見抜くことことかなと思います。長いものの端を持っても、安全ではないので、真ん中を落とさないように下から手を入れて、優しく持ってあげるイメージ。唯一無二のものばかりなので緊張します」

こうした専門的な技術を持ったスタッフや、学芸員らの手によって、展覧会は作られていきます。そして、最終チェックを終え、遂に、完成しました。

熊本市現代美術館 冨澤治子 学芸員「ほっとしてますよ。でも明日、開会式ですからね」

まだまだ気を抜けないと話す冨澤さんに、おすすめの作品を聞きました!

熊本市現代美術館 冨澤治子 学芸員「最後のご挨拶の展示がすごくいいですよ。チラシの中心に使ったイラストとやなせ先生がさようならと言っているパネルはなかなかグッとくる。やなせ先生の人生を感じていただける展示にはなったと思うので、じっくり向き合っていただければと思います」