青森県内の優れたものや取り組みに迫るキラリ逸品。今回は火災現場などで生命や財産を守るために使われてきた消防ホースを再利用して作られている財布の魅力に迫ります。

青森県弘前市にある就労継続支援施設NーSTAGE。こちらでは障がいのある人たちが日々作業にあたっています。青森県内の多くの就労支援施設ではパンやクッキーなどといった加工食品を製造していますが、NーSTAGEの特徴は「ものづくり」が中心だということです。その一環で7年ほど前から取り組んでいるのが古くなって使えなくなった消防ホースを再利用した財布の製作です。

※N―STAGE 山形謙一(やまがた・けんいち)主任
「今で言えばSDGsって言葉がありますけれど、当時でも廃材を使って作るものをはじめたいという思いがあったものですから、食べ物っていうよりもまず雑貨類を作ろうというところではじめていたので、それが結果的に今となっては他の事業所と特色が違うようなところもあって利用者の通いたいという気持ちにもつながったのかなとは思います」

きっかけは珍しい素材を使った製品を作ろうと、インターネットを検索していて見つけた消防ホースの再利用商品との出会いでした。はからずも事業所に工業用ミシンがあるため、高度な財布を作ってみようと決めたと言います。

消防ホースは、弘前地区消防本部が管轄する各消防署から毎年約100キロ分を譲り受けていて、たわしで丁寧に洗ったあと、目分量で切っていきます。素材は破れにくく丈夫なため加工は難しく、ミシンの針が折れてしまうこともあるそうです。

※製作する人は
「ラインも何も入っていないので自分の感覚で縫うんですよ。皮だから質が違うのできれと違って難しかったです」

ミシンを使う作業は熟練度が必要で2年前から事業所に通う男性が一人で担っています。

※製作担当者は
「会社のために少しでも(販売して)潤えばなと思っています。誰かいい人いないですか?(取材したキャスター)河村さんどうですか?」
1つの財布を作るのには2日かかり、大量生産はできませんが丁寧に思いを込めて日々製作しています。


※河村庸市キャスター
「材料となる消防ホースは色とりどり、それがそのまま作品に反映されるのでよりお気に入りが見つかるのではないでしょうか」

黄色や緑、赤などの色のほかホースの折り目はそのまま残りこれがまた味わいとなっています。また、耐水性・耐久性とも高くデザイン性も優れています。

※N―STAGE 山形謙一主任
「素材としては丈夫なのでなかなか傷みにくい、擦れたり色が落ちてきたりするんですけどそれも経年変化ということで年を重ねていくごとにまた違う表情が見られる」

消防ホースの交換時期は10年から20年と言われていて古くなったものは産業廃棄物として捨てられます。弘前地区消防事務組合消防本部ではこれまで愛用してきたホースが新たな商品に生まれ変わることを誇りに感じているといいます。

※弘前地区消防事務組合消防本部 長内優二 総務課長
「実際に火災現場で生命身体財産を守るために20年間使ったホースですので、やはり思い入れがあります。世界的にも日本でも環境は問題になっているので、(私たちの)組合でも廃棄するホース等であれば協力できますので、そういう形で環境に貢献できるのは大いに光栄」

消防ホースで作った財布は、N―STAGEが月に一度、弘前市役所内のブースで販売しているほか、地域のイベントにも積極的に出展してPRしています。

※N―STAGE 山形謙一主任
「消防のファンの方が手に入れているというところもあるんですけど、消防を好き嫌い抜きにして素材としてもとても魅力的なので、イベント出展しているときとかは気軽に見ていただいて、より多くの人に使っていただきたいなとは思っております」

幾多の過酷な火災現場をくぐりぬけ、多くの人を守り抜いてきた消防ホース。財布に生まれ変わることで使う人の財産を守るという新たな使命がスタートします。



価格は税込み8500円、今後はオンラインショップでの販売も考えているということですが大量生産ができないので抱えられる在庫には限界があります。月に一度の弘前市役所での販売は、次回11月8日に予定しています。