秋の中ノ島で桜を探す

撮影を始めたのは、ドラマ放送中の2024年11月。King Gnuの「ねっこ」が頭の中でリフレインし、気分はすっかりドラマの世界。

目的はただ一つ。「桜の木は、本当に存在するのか?」

秋の桜の木の特徴を頭に入れ、中ノ島の上空へ。頂上は巨木に覆われていたが、モニター越しに1本の木を見つけた。「これだ」と確信したその木は、葉も花も落ちた枯れ木だったが、どこか不思議な存在感を放っていた。

桜の木は実在した 中央の枯れ木が桜

そして春ー

2025年春。今年は寒暖差が激しく、街中でも満開の木と蕾の木が入り混じっていた。

中ノ島の桜は、果たして咲いているのか?咲いていてほしい。そう信じて再び中ノ島の上空へ。

遠くからは何も見えなかった。だが、ドローンが近づくにつれ、モニターにピンク色の花が浮かび上がってきた。

桜の木は多くて「3本」だと思っていたが、よく見ると、春の訪れを静かに告げる「4本」のヤブ桜が、木々に埋もれながらも確かに花を咲かせていた。コンクリートの島とも言われた端島(軍艦島)の島民に、春の訪れを知らせていた桜の木。

決して華やかではない。むしろ周辺の木に絡まれ、埋もれ、押しつぶされそうな中で花開き、かろうじて存在が分かるヤブ桜だ。でも、季節がくるごとに人知れず花を咲かせてきたその姿は、力強く、美しい。

桜の木は4本あった

孤島の桜は、まるで昔を懐かしむようにー
無人となった軍艦島に向かって咲いていた。