狂言師の野村萬斎さんが8月7日〜10日に東京・GINZA SIXにある観世能楽堂で演出・出演する「ー能 狂言ー『日出処の天子(ひいずるところのてんし)』製作発表記者会見」が行われ、原作者の山岸凉子さんと共演の人間国宝・大槻文藏さん、大槻裕一さんと共に登壇しました。

ー能 狂言ー『日出処の天子(ひいずるところのてんし)』製作発表記者会見 左から 大槻裕一さん・野村萬斎さん・大槻文藏さん・山岸凉子さん

日出処の天子(原作コミック)



「日出処の天子」は雑誌 「LaLa」 にて1980年4月号から1984年6月号まで連載された山岸凉子さん原作による漫画作品。単行本 (花とゆめコミックス) は全11巻。 1983年第7回講談社漫画賞少女部門を受賞し、1994年白泉社文庫立ち上げの作品として刊行されています。

物語は飛鳥時代前夜、 権勢を誇る蘇我氏の後継者たる毛人。父に連れられて出仕した朝廷で、厩戸王子と出会う。毛人と厩戸、 ふたりの激動のストーリーです。

野村萬斎さん & 大槻文藏さん


大槻文藏さんは “監修となっていますが、ほとんど萬斎さんがしてくださるので、ちょこっとだけアラを探して申し上げる程度です” とジョークを飛ばすと、萬斎さんは “文藏先生、そうはおっしゃいますが、いろいろな宿題、ハードルをつけてくださるので、それを乗り越えてこそという思いもございます。最近は漫画・アニメなどの作品もさせていただいていますので、また違った作品になるよう祈念しています” と、意気込みを語りました。

原作者・山岸凉子さん



1月に能狂言化が発表されると、SNSでトレンド上位にあがるなど大きな反響を呼んでいる本作。原作の山岸さんは舞台化オファーについて、 “能狂言は日本で最も古い伝統芸能。それをサブカルチャーである私の作品を舞台化したいという話が来て、とても驚きました” と語りました。さらに、 “しかも常日頃、「この方はスゴイ」と思っていた野村萬斎さんだったから、さらに能の重鎮である大槻文藏さん、裕一さんが演じると聞き正直、舞上がってしまいました” と興奮気味に語っていました。

大槻文藏さん & 山岸凉子さん



また連載中の苦労について山岸さんは、 “40数年前の聖徳太子像は一万円札の印象。それを少女漫画で連載すること、さらに同性愛など問題を多く含む内容で、編集部とも相当揉めました” と語りました。そして、 “当時は「同性愛」という言葉を使う事もはばかられ、当然「ジェンダー」や「性同一性障害」なんて言葉も出ていなかったけど、私にとっては是非とも「片や異性であろうとなかろうと、愛する事の尊さを誰はばかることなく書くべき」と思いました”と、当時を振り返っていました。

文藏さんも原作の感想について、 “一言で言うと、おどろきです!” と目を丸くして答えると会場から笑いがこぼれました。

野村萬斎さん


萬斎さんは原作との出会いについて、中学か高校の頃。姉二人が面白いと読んでいたものを、お下がりのように読んだとのこと。“ショッキングな事もありつつ、読み込んだ覚えがあります”と答え、“あの頃は、ちょっと前に「寺内貫太郎一家」で「ジュリー」と樹木希林さん、当時の悠木千帆さんがやっていた、沢田研二さんがまさに両性具有のようなイメージでいられた事というのが、またうちの母と姉がファンだったことから見ていて、なんとなくそういう世界がある事はわかりつつ、この作品を見て聖徳太子は善なる者、お札になるエライ人というイメージが「あれ?なんかそうでもないな?」”と感じたそう。 “幼少期から見ると「たいへん大人なもの」だと思った覚えがあります”と笑顔で振り返っていました。

野村萬斎さん


萬斎さんは、 “とにかくぶっ飛んでいます。そのぶっ飛んでいるというか飛躍するところが、まさに能や狂言の真骨頂なのではないか?すべてを理詰めでするのではなく、ある種、象徴性を含めたシーンによって何かが繋がり飛び越えられるのが、この作品のスケールの大きさだと思います” と、本作の見どころを語っていました。

【担当:芸能情報ステーション】