ガス給湯器で国内シェアトップのリンナイが、世界で初めて二酸化炭素(CO2)を排出しない家庭用水素給湯器を開発した。内藤弘康社長は「メーカーとして脱炭素社会の実現に向けたCO2削減が大きな使命のひとつだ」と言う。脱炭素時代にどのような成長戦略を描くのか、内藤社長に聞いた。
■実は「湯沸かし」が家庭のCO2発生量の30~40%を占める

ーー自身が社長のときにCO2ゼロを目指す時代が来るとは思っていなかったのでは?
リンナイ 内藤弘康社長:
それは思っていませんでした。急テンポですよ。
――般家庭で給湯や調理から出るCO2は多いのか。
リンナイ 内藤弘康社長:
実はお湯を沸かすのには非常に熱量がいります。ガスやエネルギーを非常に使うわけですから、CO2発生量は結構多いのです。家庭のCO2発生量のうち、お湯で発生させるのが30%から40%ぐらい。日本全体の給湯器のシェアなどを考慮すると、うちの器具から出ているCO2が日本全体の排出量の1.5%で、結構大きいのです。
リンナイの売上高は15年前に比べ約1.5倍になっている。しかも、海外の売上比率が半分以上を占める。アジアの国々が豊かになり、お湯を使う生活が世界中に広がっており、アメリカでもタンク式ではなく瞬間式の湯沸かし器が流通するようになってきているという変化も捉えている。
■CO2を出さない「水素給湯器」実用化に向け11月検証開始

今年7月、リンナイがオーストラリアで披露したのは、新型の水素給湯器だ。ガスの代わりに水素100%で湯を沸かすもので、家庭用給湯器として世界初の技術だ。燃やした時にCO2を出さないことが水素の最大のメリットだという。
ガスから水素に切り替えるのは簡単ではない。天然ガスと比べ水素は燃焼速度が約8倍と速いため、バーナーの内部に炎が入る「逆火」という現象が発生する恐れがあった。 
そこでバーナー部分の金属板を変更。ガス給湯器で使用していたものと比べ、網目の細かさを100分の1にし、水素は通す一方、炎は通さないようにした。
さらに、燃料を供給するパイプの位置も調整。従来のガス給湯器では、バーナーから離れたところにあったが、水素給湯器ではよりバーナーの近くに設置し、万が一逆火した場合も引火する水素の量を少なく抑えるのだ。














