男は控訴せず、判決は確定した。

男は拘置所を出て、一人暮らしを始めた。

気づけなかった“限界のサイン”

「介護者・要介護者共に『死にたい』と漏らすことは、大きなリスクのサインです」

司法福祉を専門とする日本福祉大学の湯原悦子教授に、今回の事件について尋ねた。

夫婦が暮らしていた「サービス付き高齢者向け住宅」は、居住空間のバリアフリーはもちろん、介護のプロによる安否確認や生活相談といったサポートが整ったうえで、高齢者にとっては自由度の高い生活が送れる福祉サービスだ。

ただ、湯原教授は、介護意識が比較的高いと言える環境であっても今回のような事件は起こり得ると話す。

湯原教授「介護者が、家族の介護について、自分たち自身のことだと思うのはある意味当然です。そもそも誰かに相談するという発想がない、また、何をどこまで相談してよいのか分からない場合も少なくありません」

「今回の事件では、介護される人(妻)が『死にたい』と語っていました。要介護者・介護者が『死にたい』と言葉にしたら、福祉関係者はそれを心中のリスクと捉え、当事者に介入してほしい」

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